小説・漫画好きの感想ブログ

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「共和国の戦士2 星間大戦勃発」 スティーブン・L・ケント著 感想 

 最強のクローン兵士、ウェイソン・ハリスを主人公にしたSFです。
 今から500年後の世界、転送装置技術も開発した人類は、銀河の隅々にまで植民地を作り、それぞれの銀河を支配していました。その世界はUAというアメリカ合衆国を基盤にしたような組織が統治していました。銀河の隅々まで探索しても異星人と出会うことのなかった人類。本来なら、そこには戦争もなければ領土紛争もなさそうなものですが、政治や宗教の違いは再び何百とある殖民惑星連合同士の大戦争を引き起こします。
 彼らの世界にあっては、戦士の多くは工場で作られたクローンが担当します。偽りの記憶と、認識系統の処理で(他人がみれば全て同じ顔かたちのクローンは一目でそれとわかるのですが)自分の姿が認識できず、自分たち自身ではクローンと気づけず、それでいてまわりのクローンはクローンと認識できる彼らは、自分は人間だと信じ込んだままで軍人として生きています。そして、もし自らがクローンであることが分かればその瞬間に脳が破壊され死んでしまうクローンたち。
 主人公のハリスもまたそんなクローンの一人なのですが、彼はそのクローンの中にあっても、リベレーターという既に製造が中止されている古いタイプの、しかしそれでいて闘争本能や攻撃能力に秀でたクローンであると同時に、自分の正体に気づいても死なないタイプのクローンです。
  
 前作で、自らの正体を知り、一事は絶望の淵におちいったものの、四つの銀河を二分する大戦争の一極、UAの最高元帥クライバーの護衛役として自らの立ち位置を定めたかに見えたハリスでしたが、今作は更なる混乱と悲劇が彼を襲います。果たして、銀河戦争はどちらの勝利に終わるのか、日本人(混血という言葉が既に意味をもたちないようなこの世界においても他と交わらず独自の文化と価値観をもつ彼らは一つの勢力として登場します)との戦いはどうなるのか、また、自らのアイデンティティーに悩むハリスに救いはあるのか。キリスト教は彼に救いを与えることができるのか。
 スペースオペラSFとしてと同時に、宗教論としても楽しめる一冊でした。続刊に続きます。
 

共和国の戦士〈2〉星間大戦勃発 (ハヤカワ文庫SF)

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