小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

東京電力、裁判で賠償免責を主張 原子力損害賠償法の「巨大な天変地異に該当」

なにも決まっていない段階で、東電だけを非難するのは片手落ちだが、こうした状況で東電が自分たちには免責の余地があり、東京電力の清水正孝社長が賠償金の支払いについて争う姿勢を見せたということは国民感情としてはなかなか納得しがたい事だと思います(この点については海江田万里経済産業省相の意見に賛成)。
 確かに、原賠法によれば、抗しがたい天変地異などによれば免責が認められる余地がありますが、今回のそれは該当しないのではないかと僕は思います。一撃目の津波で、原子力発電所自体が完膚なきまでに破壊されてしまったり、原子炉ごと流されたりしてしまうような事態であればまだしも、今回の失敗は電源全喪失に対する備えのなさと、そうなったあとの対応、ベントをすぐにあけなかったのと、保身に走って隠蔽工作をかなりしたことなどの人災部分が大きい事が明らかになってきた現状では、さすがにそれは法律を悪用していると言われかねないですからね。
 東電側が打ち出している従業員の給与二割削減、役員報酬の最大五割削減でも、この事態にも関わらずボーナスを出すということで反撥を招いているだけに、、どうなのだろうか、と。正直、もしもこれで国と責任をめぐって争うなどという事態や、不服をもって自然エネルギーの買い取りという諸外国に見られる制度への拒否などの事態になれば事態はさらに泥沼になるような気がします。

 福島第一原発の事故に絡み、福島県双葉町の会社社長の男性(34)が東京電力に損害賠償金の仮払いを求めた仮処分申し立てで、東電側が今回の大震災は原子力損害賠償法(原賠法)上の「異常に巨大な天災地変」に当たり、「(東電が)免責されると解する余地がある」との見解を示したことがわかった。
 原賠法では、「異常に巨大な天災地変」は事業者の免責事由になっており、この点に対する東電側の考え方が明らかになるのは初めて。東電側は一貫して申し立ての却下を求めているが、免責を主張するかについては「諸般の事情」を理由に留保している。
 東電側が見解を示したのは、東京地裁あての26日付準備書面。今回の大震災では免責規定が適用されないとする男性側に対して、「免責が実際にはほとんどありえないような解釈は、事業の健全な発達という法の目的を軽視しており、狭すぎる」と主張。「異常に巨大な天災地変」は、想像を超えるような非常に大きな規模やエネルギーの地震・津波をいい、今回の大震災が該当するとした。
 一方、男性側は「免責規定は、立法経緯から、限りなく限定的に解釈されなければならない」と主張。規定は、天災地変自体の規模だけから判断できるものではなく、その異常な大きさゆえに損害に対処できないような事態が生じた場合に限って適用されるとして、今回は賠償を想定できない事態に至っていないと言っている。
 菅政権は東電に第一義的な賠償責任があるとの立場で、枝野幸男官房長官は東電の免責を否定しているが、男性側代理人の松井勝弁護士(東京弁護士会)は「責任主体の東電自身がこうした見解を持っている以上、国主導の枠組みによる賠償手続きも、東電と国の負担割合をめぐって長期化する恐れがある」と指摘。本訴訟も視野に、引き続き司法手続きを進めるという。これに対して、東電広報部は「係争中であり、当社からのコメントは差し控えたい」と言っている。

  
 原子力損害賠償法とはどんなものかについては、簡単に説明しづらいが、ポイントの不可抗力かどうかに関しては一般に次のような解釈がなされている。
 「異常に巨大な天変地異又は社会的動乱」については、地震であれば関東大震災の3倍以上の加速度をもつもの、隕石の落下や戦争などを想定したもの(文部科学省幹部より)としており、今回の福島第一原子力発電所事故には適用されないと思われる。
 あと、東電以外の関連メーカーには責めは行われない。これは、責任集中の原則と呼ばれるもので、そのリスクを関係メーカーや業者に対して行うと健全な発達や運営ができなくなるおそれがあるので、すべての責任を東電のような原子力発電を使っての電気事業者にすべての責任を負わせる法律となっている。

追記:東電のいいぶんとは全く逆にたくさんの請求が東電に対してはなされている。

 東京電力福島第一原子力発電所事故の賠償範囲の指針を定める政府の「原子力損害賠償紛争審査会」(会長・能見善久学習院大教授)の第3回会合が28日、文部科学省で開かれ、1次指針を了承した。
 政府の指示に基づく住民の避難費用や営業損害のほか、政府が出した出荷制限や自治体の自粛要請による農家や漁業者の損害などが賠償の対象となった。
 まず、福島第一原発から半径20キロ圏内と「緊急時避難準備区域」、「計画的避難区域」では、〈1〉交通費や宿泊費など避難費用〈2〉PTSD(心的外傷後ストレス障害)を含め、避難による健康悪化の治療費や死亡による逸失利益〈3〉営業が不能になったり、就労が困難になったりした場合の減収分――などを対象とした。
 体育館などの避難所の場合も、「ホテルなどの宿泊者より、賠償額が少なくなるのは公平性を欠く」と指摘。全員に平均的な宿泊費を支払うか、精神的苦痛への慰謝料を増額するなどの方法を早急に検討するとした。精神的損害は「放射性物質への一般的な不安感などは認められない」としたが、認める範囲や賠償額の基準は2次指針以降で検討することになった。
 また、政府の出荷制限だけでなく、自治体による出荷や操業の自粛要請による農家や漁業者の損害も、「合理的な理由」があれば認めるとした。農協など生産者団体による自粛も、県との協議に基づいて行った福島県の漁業者団体の操業自粛の減収分は認めるとした。
 1次指針の対象外となった住民の避難費用や、風評被害を含む営業損害などは今後検討し、7月には指針の大枠を示す。