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映画 「相棒-劇場版Ⅱ-」 感想

 映画相棒の感想です。ネタバレを含みますので気をつけて下さい。
 杉下右京(水谷豊)と神戸尊(及川光博)のコンビになっての初の映画版ということで、期待して見にいってきましたが、見事にその期待を裏切らない予想以上の傑作作品になっておりました。

 物語冒頭、いきなり警視庁の本庁ビルの11階で、史上最悪の立てこもり事件が発生します。人質に取られていたのは、会議室に集まっていた警視総監以下11名の部長達。いわば警視庁の実質的な支配者たちでした。いち早くその事を知った警察庁は警視庁に圧力をかけるために動き、杉下右京もビルの外から会議室の様子を偵察に走り、SATや機動隊も動き始めます。立てこもっていた犯人が、実は元警視庁所属の八重樫という対組織班の刑事だったことが判明したために、余計に動きが早期決着に一気に傾いていきます。
 そのため対策班は、事件発生からわずかに数時間で強行突入を敢行します。しかし、その同じタイミングで、室内では立てこもっていた八重樫が複数の部長達ともみ合いになり、射殺されてしまいます。ただ、もみ合いの中でのこととして、事情聴取も形ばかりのことをして、警視庁は形上の犯人として一人の部長をあげ、正当防衛として事件を処理します。
 一見これで事件は解決したかに見えました。が、しかし、立てこもり事件には裏があり、警察庁は警視庁との権力闘争の為にこの事件を利用しようと動き始めます。相棒テレビシリーズではおなじみの、官房長の小野田公謙や監察官の大河内などが動きます。一方、事件に釈然としないものを感じた右京たちは、当日に八重樫を警視庁ビルに招き入れた元公安の朝比奈圭子(これが小西真奈美さんです)からどんどんとこの事件にあった裏側の真実に迫っていきます。
 二人の前に浮かんできたのは7年前の事件と、闇の管理官と呼ばれる存在。
 7年前に一体何があったのか。そして、それを使っての警察庁と警視庁の権力闘争はどういう結末を迎えるのか。話はどんどん盛り上がりを見せていきます。。。
 
 ということで、映画にふさわしい複雑なプロットと重厚な物語を見せる今回の「相棒-劇場版2-」はかなりいい出来です。派手なアクションシーンというのはないのですが、じっくりと犯人を追い詰めていく杉下と神戸の刑事ドラマとしてのシーンを描くパートと、そういう事件そのものも政争や権力闘争の一つのネタにしか思っていない警視庁・警察庁のトップたちのパートがいい具合に対比されていて、物語に深みが出ていました。
 現場の刑事達にとっては、真実を掴むこと、事件を解決することが勿論一番なのだけれど、上のほうにいけば決してそれが一番求めるものではないという矛盾があり、作品中で「真実なんてものはない」「正義なんて立ち位置で変わるもの」「自分は正しい、間違っていないと思っているだけ性が悪い」なんていう話が普通に出てくるところが、このドラマらしくて良かったです。
 それだけに、最後の最後で、相棒シリーズではなくてはならない存在と思われていたある方が死んでしまったのには衝撃を受けました。彼と杉下右京との、相容れない信念がもとでのぶつかり合い、それでいての相互への信頼や共闘関係、またその逆の牽制のしあいもこの相棒という物語の大きな要素だったと思うので驚くとともに、今後物語はどう展開していくのだろうかと凄く今後が気になります。
 でも、考えてみれば、この相棒という足かけ10年もの長寿番組は、一番ありえないはずの主役二人の相棒関係の解消ということをやってのけたチームですから、今後も色々と新しいものを取り入れながらやっていくのでしょうね(であれば、いつか杉下右京と神戸尊と、復活の亀山薫のそろい踏みもあり得るかも知れませんね)
 ともあれ、すごくいい映画でした。
 レイトショーだったためか、何故か10名程度という少人数しかいなかったのですが、是非是非これは見て欲しい映画ですね。
  
 あと、最後に一つだけ蛇足的に挙げるなら、小西真奈美さんの演技が今回はすごく光っていました。小西さんが美人女優なのは今更な話ですが、彼女の演技がとても上手くて、ぐっと画面が引き締まって見えました。