小説・漫画好きの感想ブログ

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「美味しんぼ104 続・食と環境問題」 雁屋哲著 

 美味しんぼ、最新刊です。
 至高VS究極の対決も、かつての山岡VS海原雄三ではなく、飛沢VS良三が主体になっていて、世代交代は進んでいるのですがそれでも内容のほうは例によって例のごとくで、前回と同様に今回も「食の安全性と環境問題」をテーマに対決は進んでおります。
 昔見たいに料理のアイデアや、料理のうんちくで戦う、あるいは色々な問題を料理で解決していくといったような話ではなく、漫画の名を借りた教養もの、啓発もの、環境問題の問題提起ものとなっております。このあたりが、最近では固定ファン以外が読まなくなったゆえんなのでしょうが、内容は確かにみっちりと詰まっていて、そういうのが好きな人、環境問題などに意識をもっている人にはちょうどいい入門書になっていると思います。
 さて、今回取り上げられているのは、蜜蜂・豚・牛・牛乳・マツタケ・農薬です。
 ミツバチのほうは、既に現実世界では一つのブランドとなった銀座ハチミツが取り上げられています(一つ1000円するプリンとかがスイーツ番組で取り上げられてより有名になりましたね)。そして、その銀座ハチミツから展開して、世界各地で起こっているハチミツの群れがまるまる消えてしまうという事件の裏にあるのは、本当は農薬の害がその原因ではないか。具体的にいうと、ネオニコチノイドというものではないのか。ということが問題提起として語られます。たしかにミツバチの群れの消滅は、ミツバチの群れがなくなることそのものだけでなく、色々な草花の受粉が滞るという弊害もあるというような話もでてきます。
 このようにすべての問題についてあれこれ語られます。
 その中で僕が一番注目したのは、牛乳の問題。
 日本の牛乳のコストが高いのは、実はアメリカ産をはじめとした穀物飼料を与えているからだが、牛乳本来のおいしさや健康を考えると本当は穀物を与えずに草だけを与えるほうがおいしいものがより安価にできるという話が一番興味深かったです(食肉用の牛には穀物やらビールやらで脂肪分をよりベストな形で多めに与える工夫は必要ですのでわけて考えてくださいね)。
 じゃあ、なぜ、日本の酪農家は、牛乳がよりまずくコストが高くなる穀物飼料を与えているかというと、牛乳を販売するときに乳脂肪分が3.5以上ないと牛乳の販売価格を半分にしないといけないというへんてこなルールがあるからだそうです。そのルールがあるために、より太らせ、脂肪分が牛乳にたくさん含まれるように、海外の穀物飼料をたくさん与えているそうです。本末転倒というかばかばかしい話です。
 度を越した低脂肪乳はおいしくないし(妙にあまいしコクがないので駄目です)意味がないですが、こういうつまらない規制のために牛乳本来のおいしさが損なわれたりコストが高くなっているのはどうかなと思います。個人的な好みでいえば、本当は脂肪分がむちゃくちゃ多い牛乳、たとえばジャージー牛乳とかのほうが個人的には好きですが、世間一般の好みでいえば、そういうルールを撤廃することで一般の牛乳価格が下がり、なおかつ酪農家の方にとってはコストダウンで利益があがるならそうう方向に進めていってほしいなと思います。
 もちろんダイエット用の脂肪分抜きのものとか、高脂肪のものもありで。そういう多様性のある選択制のある生活こそが日本の目指す豊かさだと思うので、それはそれで残した上でこういうへんな規制で酪農の可能性を減らしたり、苦しめたりするのはいいかげん変えていってほしいものです。

美味しんぼ 105 (ビッグコミックス)

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