小説・漫画好きの感想ブログ

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「宇宙は何でできているのか」 村山斉著 

 新書の新刊です。
 小惑星探査船の「はやぶさ」の帰還で火がついたのか、今出版業界では宇宙関連の本がたくさん出ていますが、これもその中の一冊です。著者の村山氏が、IMPU(数物連携宇宙機構)という機関の機関長ということで、これなら現時点での宇宙研究の概要が簡単に概観できるだろうということで購入しました。
 その期待通り、本書は平易な文章で語りかけるように説明してくれます。
 勿論、この手の本の特徴として、最初は簡単なんだけれど、奥の方に進めば進むほど難解なことを言い出すようにはなってくるのですが、それでも他の同種の本に比べたらなかなか読みやすいのではないかと思います。そして、その読みやすい中でも、新しい知識だったり、その筋では有名なのでしょうけれど世間一般には知られていない情報もたくさん出てきています。
 例えば、宇宙は何からできているのか、という本の題名にもなっている問い。これに対する答は、星やエネルギーから出来ているというのが今までの一般的な答だったかと思います。しかし、ここにきて分かったところによると、この宇宙にあるすべての星や既知のエネルギーのすべてをたしても、宇宙全体の質量のたったの4%しかないというのです。つまり、宇宙の96%は我々の知らない元素、もしくは全く未知の物質、未知の何かが満ち満ちているというのです。そして、それをダークマター暗黒物質と呼ぶのだそうです。
 ダークマターなんていうと、イメージとしてはそれこそダースベイダーであったり、暗黒のエネルギー的なものが想像されますが、もちろんのことそういうファンタジックであったり邪悪な何かというものではなく、単純に、存在はないとおかしいし、理論的にはあることが証明されているけれど、今までの科学では見つけられなかった何か、があるというのです。これには、証明の方法がいろいろあるのですが、太陽系や銀河系が今の形を存続させられているのは、実はこれらの物質があるからというのもその中の一つだそうで、もしこういう物質が存在していなかったら銀河系はバラバラになってしまうそうです。
 なかなかに不思議ですよね。
 また、E=MC2の公式で有名な相対性理論も、宇宙の始まりのビッグバンの瞬間にはその数式が特異点となって成立しないのでというような話や、いわゆる量子論の必要性などがもし語られます。日常で暮らしている限りにおいては、たぶん我々の世代にはこの量子の話が直接テクノロジーに加わってくるということはないと思いますが、将来的には量子コンピュータなどが出てくるだろうという話もありますので、そのあたりも興味深いです。
 ということで、なかかな読みやすい一冊でした。
 

宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)

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