小説・漫画好きの感想ブログ

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「遠まわりする雛」 米沢穂信著 

 米沢穂信さんの「古典部」シリーズの第四弾。
 「愚者のエンドロール」「氷菓」「クドリャフカの順番」に続く作品です。
 日常の謎の系統の高校学園ミステリ作品であるこのシリーズには珍しく短編連作集です。しかも時代がさかのぼって彼らが高校一年生だった頃に戻ります。
 主人公は、省エネがモットーで「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短かに」が信条の折木奉太郎と、天然系のお嬢様の千反田える。そこに、奉太郎の昔からの友人の福部里志と、彼に思いを寄せる伊原摩耶花の四人が加わるという定番メンバー。
 日常の謎の中で、高校生らしい悩みや葛藤や、青春の甘酸っぱい感覚を感じられるこのシリーズは、他の米澤作品と違って後味の苦味が少なく読みやすいです(ただし、「氷菓」は結構厳しい)が今回はその青春的な部分が強く描かれています。あぁ青春時代ってこういう意味のない(?)悩み方をしたり、うきうきしたり、一つ一つのイベントに異常に力が入ったり、ちょっとしたことか人生の一大事な気分にすぐなったりしたなぁ、と青春時代を追憶するに楽しい本です。
 青春時代の恋愛だったり日常は、大学の頃のあけっぴろげで駆け引きもいきつくところまでいきつくような恋愛と日常でなく、高校生独特のものがあるのを懐かしく思い出させます。
 今回の表題作である「遠まわりする雛たち」は特にそういう気分が味わえますし、謎の解決編も、独特の舞台設定も小粒ながらよくできた佳作です。

遠まわりする雛

遠まわりする雛