「ローマ人の物語37 最後の努力(下)」 塩野七生著
政治の話が続いているので、こんなのも。
紹介文を抜き書きすると、こんな感じ。
紀元324年、ライヴァルのリキニウスを敗走させ、ただ一人の最高権力者として内戦を勝ち残ったコンスタンティヌス。帝国全体の一新を企て、自らの名を冠した新都コンスタンティノポリスを建設。帝国の絶対専制君主として君臨したコンスタンティヌス帝は、旧来の安全保障の概念を放棄し、キリスト教を特権的に振興。ローマをまったく別の姿に変えてしまう。それは中世のはじまりの姿だった―。
ということだが、読めば読むほど、このコンスタンティヌスはローマを徹底的にというか不可逆的に変えてしまった皇帝であったのだなぁという事がとてもよくわかります(コンスタンティノポリスというのは言うまでもないですが、コンスタンチノープルのことです)。 都を東に新都を作った彼は、政治的駆け引きというか、自分の権力基盤を確定させてしまうために、巧妙な誘導でキリスト教を事実上の国教のような位置につけていってしまいます。
これは、西方ローマよりも、むしろ東方に力をもっていたキリスト教徒たちを、政治基盤のために味方につけるためであったのと同時に、それまでの皇帝がローマ人の民意によって自由に選ばれ、それ故に逆に市民たちに殺されうる存在であったのを、その権威は神からのもので人がとやかく言えないものであるという風に替える事で皇帝の地位の安定を諮ったわけであるが、ここから王権神授説やらローマンカトリックの絶対的な権力増大が始まったことを考えれば、この歴史的な意義はとんでもなく大きいです。
ある意味、中世ヨーロッパの始まりがここにあったわけです。
そういう意味でいくと、王政から、民主制、帝政、寡頭制、複数帝制とあれやこれやと統率方法を変えて延命をはかっていたローマ帝国も没落を決定的に迎えていくこの時期はなかかなか興味深いです。
- 作者: 塩野七生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/08/28
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