小説・漫画好きの感想ブログ

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「微睡みセフィロト」 沖方丁著

 77冊目の紹介本はSFです。
 伊藤計劃さんの「虐殺器官」の感動から、今年はちょっとSFも読んでいこうということで、沖方丁さんの一冊です。沖方さんは「マルドゥック・スクランブル」が映画化されるという事もあって、今話題の若き日本のSFの騎手でもあるわけですが、僕にとっては初読みの作家さんでした。
 で、「微睡みセフィロト」なんですが、、読みやすかったです。

 とある強烈な能力をもった超能力者の誕生と暴走によって世界がズタボロにされ、その戦火の中でたくさんの国が滅び、その余波で超能力者がたくさん生まれてしまった近未来。そこでは抑圧されつつも権力の側にいる超能力者と、超科学の世界の申し子たちが、世界の再建を必死になって行なっています。主人公はそういう世界の中で、超能力を用いる犯罪者に対しての捜査と逮捕(場合によっては抹殺)を行なう捜査官をしています。
 人類全体が、超能力者に対しての恐怖と嫌悪を抱きつつも、同じ人類として共存せざるを得ないし、味方である限りは心強いということで、超能力者たちと矛盾をはらみながら共生しているこの世界にあっては、彼ら捜査官はある意味常に死と隣り合わせの危険な職業であり、事件の捜査中に命を落とす者が数多く出る職業として描かれます。主人公は、そんな危険だらけの世界の中でも更に数々の難事件の捜査にあたり、それを解決してきた一流の捜査官なのです。
 そういう経緯もあり、今回も彼は、世界政府の高官が生きながらにして、バラバラに裁断されるという事件を捜査することになるのですが、今回はそこに超一級の超能力を持つ少女がパートナーとして派遣されてきます。実は、彼女にはとんでもない秘密があり、その秘密こそが世界が今のようになってしまった事件に繋がっていくものであり、彼は事件の捜査を進めていく中で自分が実は別名の任務を本人が知らぬところで与えられていたこと、そして自身にも秘密があることに気がつきます。。。
 ということで、あとは読んでのお楽しみですが、なかなか読み応えもあったに関わらず極めて読みやすいSFでした。ちょこっとこの作家さんは追っかけてみようと思います。