「つまみぐい文学食堂」 柴田元幸著 感想
本年61冊目の御紹介本です。
さて、今日は家で書類仕事で、食事以外は家でパタパタとキーボードを叩いているのですが、こうして頭を使う作業を続けていればいるほど、何か美味しいものを食べたいなと思うのは人の性ですよね。僕であれば、香り高い珈琲やら、材料を吟味して新鮮な野菜とほどよくベーコンや鶏肉を調理したサンドイッチ、或いは卵の火の入り加減がちょうどいい丼もの、或いはスパイスの具合と茹で具合がちょうどいいパスタとか、そういうものが食べたくなりますが、人によっては、これがお酒であったり、うまい蕎麦であったり、肉汁がしたたるレアステーキかも知れません。
それはともかく、そういう食べ物に関するあれこれは、当然僕たちがよく読む小説にも頻繁に登場するわけで、それこそ作家さんよっては(例えば池波正太郎やレックス・スタウト)食べ物が無性に食べたくなる作家さんもいるし、勿論そうでない、殆ど食べ物と名のつくものが作品中にでてこない作家さんもいますが、基本的には小説が人の営みを描くものである以上、食べ物についてのあれこれは出て来ますし、それによって登場人物のキャラクターが雄弁に語られたりもします。
そんな小説登場の食べ物のあれこれ、そしてそれにまつわる蘊蓄と、著者の柴田元幸さんのそれらに対する思い入れをまとめたエッセイがこの本です。メニュー、にんにく、じゃがいも、鯨、コーヒー、チキンポットパイ、それらが出てくる小説などのこともあれこれ描かれている本作は、まとまって読むのにはちょっとかったるい所もありますが、これを読んで見たいなと思わせる作品なんかの情報もちらほらと散見できてなかなか興味深かったです。柴田さんという方が文体から感じさせるちょっと格調高い雰囲気と、本書でみせる横顔のギャップがけっこうあったのも、マニア的には嬉しい発見でした。
ちなみに、イラストは吉野朔美さんです。
- 作者: 柴田元幸
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/02/25
- メディア: 文庫
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