「夏目友人帳」9巻 緑川ゆき著
しみじみ、ほろりとせつない、人間と妖との物語。夏目友人帳。
アニメのほうの出来がものすごく良かったこともあってブレイクした作品もいよいよ9巻を迎えました。妖怪たちが見えるが故に、小さい頃からまわりから浮いてしまい、親戚中をたらい回しにされていた優しい高校生の夏目。1巻、2巻あたりでは、あまりの薄幸ぶりといじらしさに読んでいるこちらの胸がしめつけられるような、胸苦しささえ覚えてしまう主人公でしたが、理解者も増えてきて周りとの関係もだんだんと改善されていてほっと安堵してしまいました。
ただ、それが人間的な成長によるものなのかと言われれば、まだまだそうとは言い切れない部分があって、むしろこの変化は夏目の回りに対する気の許し方に起因するもので、人間よりも妖のほうへ、より心を開いているように見えるのには若干の危うさを覚える部分もあったりして、、、難しいところではあります。でも、リアルに少しずつ人間の幅は広がっているようで、こういう長いお話とつきあっていく中ではこういうちょっとずつの変化が楽しめるのは嬉しいものです。
お話的には、こんかいはケサランパサランのような小さな毛玉の妖の話と、妖祓い屋の的場が再登場するお話の二つが収録されています。的場は巻を重ねるごとに妖しさと恐ろしさが増していく人でございますが、、、そのうちこの方の過去などが語られるのかなと予感めいたものがありますし、あとがきで作者の方もおっしゃっているようにこの方が出てくると画面がぴりりと締まります。
あくまで人間サイドから妖怪を見て、妖怪をこきつかう的場一門の若長である的場にとっては、妖怪と心を通わせる夏目の存在は複雑なのでしょうね、きっと。少しの羨望と、少しの本当の心配、そして打算。いろいろな思惑をもち、妖怪にからむ仕事をしているが故に少し普通ではない倫理観。なかなかに気をもませる脇役です。
ともあれ、満足の一冊でした。
- 作者: 緑川ゆき
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2010/01/04
- メディア: コミック
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