小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

「死神を葬れ」 ジョシュバゼル著 感想

 ひさびさの海外ミステリです。
 現代もののミステリであると同時に、医療ミステリ? でもあり、なおかつマフィアものだったりする本書。実はもと殺し屋の、ハードなタフガイな医者が大冒険するミステリなんですよ。しかも、現代の物語と過去の物語が、語りの力でうまくリンクしながら展開していて、ひさしぶりに勢い良く読ませる海外ミステリでしたのでぼちぼちお勧めです。
 雰囲気でいうと、海堂尊の「チーム・バチスタの栄光」のような純然たる医療ミステリではなくて、どちらかというと出だしのノリと主人公がひたすらしゃべりまくる一人称な感じは初期の舞城王太郎のような感じが一番近いでしょうか。ただ、そこかしこに医学関係のブラックジョークやネタが脚注のようにつけられており、そちらもなかなか楽しくて、なんか色々な側面があって、となると、むちゃくちゃさ加減ではイヴァノヴィッチのシリーズもののような雰囲気もありますね。ハードでコアでシリアスな部分と、軽妙でノリがよくてシチュエーションコメディのようなギャグな部分とがうまくバランスとりながら共存しています。
 (ただ、こういう作品の場合、小説だと面白いけれど実写映画化するとどうなんだろう? 実はレオナルド・ディカプリオ主演で映画化決定しているようです。「チャイルド44」といい実写映画化についてはいろいろあるもんですね)
 あらすじをちょっとだけネタバレでいくと、主人公のチャーリー・ブラウンという若い研修医はマーシャルアーツを始めとする格闘技の達人にして元殺し屋という暗い過去をもっている。当然、そんな人物が普通に医者になれるわけはなく、その身分は、FBIの証人保護プログラムのもとで与えられた肩書きである。といっても、医者になるには当然それらの知識や技術がいるわけで、彼は若き殺し屋時代との決別とともにそれらを学び、能力もある本当の医師として活動し始めていたのだ。しかし、とある日、彼は病室で時分の過去を知る患者と出会ってしまう。チャーリー・ブラウンも驚いたが、患者も驚いた。てっきり自分を殺しにきたと勘違いしたスキンラテという患者は勘違いから自分の安全確保のために、保険をかける。それは自分が死んだ場合には、チャーリーブラウンを見つけたことを、彼に殺されかけた(つまりは恨みに思っている)マフィアの男に知らせるというものだった。しかし、厄介なことに、スキンラテは手術の直前で五分五分でそのまま死んでしまうような状況。ましてや彼を執刀するのは問題ありありのドクター・フレンドリーといううさん臭い医師。かくして、元殺し屋のチャーリーブラウンは心ならずもスキンラテを死なせないように頑張ろうとするが、次から次へと病院内でもトラブルがひたすら発生し続ける。ん? このあたりのドタバタはどちらかというとウィングフィールドの「フロスト警部」もののような感じか。
 ともあれ、久々に楽しく一気読みさせてくれた海外ミステリでした。

死神を葬れ (新潮文庫)

死神を葬れ (新潮文庫)

 追記:この作品が著者にとってはデビュー作です。しかも、この著者、本当に医者でありつつ作家です。やはりこれは海堂さんか^^?