小説・漫画好きの感想ブログ

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「キマイラ8」 夢枕獏著

 これも入院の時に読んだ本です。 
 たぶん、今のところ出ているキマイラシリーズは、詩集を除いてはこれで一応出そろったのかな? というくらいまで追いついて来たノベルズ版最新刊です。たぶんあと一冊番外編として青龍変が出て、あとは新刊待ちということになるはずです。
 (獏さん本人は、ひさびさに闇狩り師の新刊も出す様で元気なご様子なので是非キマイラも進めていただきたいです)
 収録は、群狼変と昇月変ということで、ぶっちゃけていえば久鬼のお父さんがキマイラと縁を結ぶ事になった若き日の冒険時代に手に入れることになった、過去の手記の時代のお話で、おそらく数十年以上も前のお話で、現地の格闘家やキマイラなどが出て来てのお話で、今後のキマイラシリーズの土台になる部分を紡いでいるところです。なので、物語中の現在にいる人間は誰もいません。チベットがまだ独立していて、中国をはじめ各国が派遣を争うようになっていた頃を舞台にしています。
 さて。
 では何が語られていくのかというと、キマイラという人にして人にあらざる進化から逸脱したものを創造する外法が太古からあったということと、それにはやはり現在知られている部位以外のチャクラが重要な要素となっていること、そしてそのチャクラによって人は獣となるというような事です。物語の根幹でもあり、夢枕獏さんがずっと追い続けているテーマである「進化」についての一つのアプローチです。
 同じ獏さんの本で「涅槃の王」という作品も同様に、人が人でなくなる法の話から始まって、進化や悟りについてアプローチしていく物語がありましたが、あちらほど哲学的ではなく、エンタメとしてきっちり描いてあります。いずれ物語は段階を経て過去から現在へと戻り、二人の血を分けたキマイラ同士、大鳳吼と久鬼麗一、また九十九乱蔵の弟の三蔵がチベット・ヒマラヤの奥地で相見えることになると思いますが、どんな結末が待っているのかこれほど予想できない物語も珍しいです。
 読者としては、時間がかかってもいいからとにかくこの高いテンションのまま結末まで進んで欲しいです。サイコダイバーシリーズも完結間近ですし、こちらもお願いしたい物です。

キマイラ 8 群狼変・昇月変 (ソノラマノベルス)

キマイラ 8 群狼変・昇月変 (ソノラマノベルス)