小説・漫画好きの感想ブログ

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「血涙」下 北方謙三著

 北方風中国歴史軍記物語「楊家将」続編の「血涙」の完結編です。
 「三国志」や「水滸伝」など、書き方やタッチがワンパターンと言われればそうかも知れないんだけれど、それでも軍記ものとしては、読む人間の血を熱くさせてくれて格好良い男達を描いてくれるだけで十分に価値有りかなと思います。
 今回の物語は、そういう軍記ものでありながら、強い悲劇性があるので余計にドラマチックなお話でした。前作で父や兄達が宋軍に見殺しにされたのにも関わらず、残った弟や妹たちは再び皇帝の命により最前線でひたすら戦闘を強いられます。生き残った中で年長だった六郎が頭領となり、心底は皇帝を信用できないままながら前線でひたすら精悍な軍を作り上げ戦いの日々になります。その中で出てくる敵将は本当は実の兄である四朗。彼はさきの戦で記憶を失くし遼の国の大将軍となっており、実の兄弟でありながら血みどろの戦いを繰り広げることになります。
 あらすじをちょっとだけネタバレするとその兄の四郎は、途中で記憶を取り戻しますが、その時には既に弟たちの軍を傷つけ兄弟や元部下を手にかけた後で戻るに戻れない状態となっており、また遼の王族との結婚も果たしていて子供までもうけた後ということでそちらの家族も確かに愛している今となっては、、、とどちらかを捨てることも出来ずに苦悩します。そのあたりが普通のマッチョな話とは違ってツボに入りました。
 

血涙(下) (PHP文庫)

血涙(下) (PHP文庫)



追記;九人兄弟で全員が超人的な能力の武力を持っていて、、、というところで「アストロ球団」を思い出したりしましたが、、知っている人はさすがにもういませんよね。