小説・漫画好きの感想ブログ

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「居眠り磐音江戸双紙 冬桜の雀」佐伯泰英 

 居眠り磐音江戸双紙シリーズの最新刊で、29冊目となる一冊です。
 山本耕史中越典子でドラマ化もされていて、着実に国民的人気作に近づいているシリーズですが、今回はかなりまたぶっとんだところに路線が進みます。今までも、一介の元浪人が江戸一の剣法道場の師範になったり、幕閣と知り合ったり、次期将軍の家基と昵懇の間柄になったりとどんどんスケールアップするところがややもすれば揶揄されてきましたが、今作では、伝説の剣士であるとともにまるで妖術使いのようなタイ捨流の剣術遣いまでが登場! 話がさらに無茶な方向に触れています。タイ捨流といえば、この磐音シリーズではたびたび悪役が遣う流派として出てきては、その遣い手が次々と斬り斃されてきたまさに噛ませ犬的な流派なわけですが(例えていえば「北斗の拳」の泰山流の拳法家のような)、ここまできちゃうかとのけぞってしまいました。
 でも、剣術活劇小説として考えれば、敵方にわけのわからない超人的な能力者や忍者が出てくるのは山田風太郎先生からのある意味由緒正しい物語展開ともいえるわけで、そう思えばこういう無茶も結構楽しいかも知れません。なんてったって、そういう妖術遣いのような剣術家に対して、主人公の磐音は夢の中に潜り込んで戦うというような事までやっちゃいますから、おおらかな気持ちで今回の戦いは読むのがいいでしょうね。
 さて。そうした冒険活劇風の話の中でちょっとしんみりというか伏線かな? と気になったのが、今小町のおこんさんが赤ちゃんが欲しいと言った話。まぁ、当然といえば当然な話で、磐音に家族が増えるのはファンとしても嬉しいところですから、このままいくとあと何巻かで二人の赤ちゃんが登場するかも知れませんね。
 

冬桜ノ雀 ─ 居眠り磐音江戸双紙 29 (双葉文庫)

冬桜ノ雀 ─ 居眠り磐音江戸双紙 29 (双葉文庫)

 追記:今月は佐伯さんのもう一つの幕末時代シリーズのほう、交代寄合伊那衆異聞シリーズも「難航」というタイトルで出ています。近々そちらもレビューします。