小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

「ACONY」 冬目景著

 アフタヌーン誌に連載している(いた?)冬目景の「ACONY」という漫画の一巻です。
 冬目景さんというと「黒鉄」「イエスタディをうたって」「僕らの変拍子」「羊のうた」などで有名な絵のきれいな(ある意味まるでデッサンのような)作家さんですが、最近はきっちりと完結した作品も少なくて、雰囲気はあるけれど作品として評価しづらい方になったしまいました。なので、自分はもっぱらコミックスになってから読む作品が多くなっております。今回の一冊もそんな感じで、書店でたまたま新刊が出てるのを見かけて「どこかで新連載だったのかな」と買ってみましたが、あにはからんや連載時期を見てみると数年以上前 ?なので、これも休載があったりなにかしらの大人の事情があったのでしょうかね。
 さて中身ですが、中身は最近ちょっと定番ジャンル化しつつある「不思議アパート」ものです。主人公は中学生の基海(モトミ)という少年。彼が母親の仕事の都合で、祖父が住む昭和初期に建てられたといういわくつきのアパートに引っ越すところから幕があきます。祖父から出る出るとは聞いていたもののあまりに気にしていなかった基海少年でしたが、管理人が幽霊で姿が見えないわ、住人の一人である編集者さんはどうやら蛇の化身のようだし、アコニーという少女に至っては自分は死人なのだと言い出す始末で、ちょっとへろへろ気味。
 しかし、それら住人がごくごく当たり前に存在しているし、別に何か危害を及ぼされるわけでもないようすに、いつしか少しずつアコニーという少女と仲良くなっていきます。彼と出会うことでアコニーという少女の十数年間まったく変わらなかった時間が少し変化したような描写が少しずつなされます。と、ここまで少女と書いて来ましたがアコニーの主観時間では彼女はすでに23歳で、その中身と外見のアンバランスさ故の微妙な感じが冬目さんのタッチとあいまって不思議な雰囲気を作っています。
 そして、「不思議アパート」系ではあるものの、どうやらアコニーの不老不死にはきっちりとした科学的な謎が物語的には隠されているようで、基海の母親である研究者なども動いており、単なる妖怪アパートものとは一線を画するSF的作品になっていくのかも知れません。ただ、このペースだと2巻が出るのはたぶん2年くらい先になるので、どうなるかまったく分かりません。
 さて。あとはおまけ的な話になりますが、この作品に出てくるおじいちゃん、ぱっと見には「もっけ」のおじいちゃんと感じがよく似ていますが、実はモデルがいまして、それがなんと高荷義之さんなのです。高荷さんといえば、タミヤ模型の戦車イラストやらマクロスのプラモデルパッケージを手がけていた方で、たぶん往年のプラモファンには懐かしくも尊敬の絵師さんだと思われます。こういうお遊びがあるのもちょっと面白いものです。

ACONY(1) (アフタヌーンKC)

ACONY(1) (アフタヌーンKC)