小説・漫画好きの感想ブログ

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「ボーイズ・オン・ザ・ラン」全10巻 花沢健吾

 少し前までビッグコミックスピリッツに連載されていた作品です。伊坂幸太郎の魔王の特装版で挿絵とカバーをしているのを見て、そういえばこの作品の最終話を読んでいなかったのを思い出して購入しました。
 このお話、ものすごく好き嫌いが別れる漫画かと思います。絵柄もさるこさながら、ドロドロとした人間の裏側だったり女性のぐだぐだで嫌な面がけっこう描かれているし、主人公が実にもてない男で頑張ってはいるんだけれど情けなくて弱くてかっこ悪くって、そのあたりがまさに持たざる者のルサンチマンな話で、、、でも個人的にはかなり好きな作品でした。この主人公の報われなくても頑張っていこうとする姿や、どうしようもない女だとわかっても好きなんだから仕方がないとその女の子の名誉のために頑張る姿(ありがた迷惑と思われても)や、それでも報われない姿に共感するからです。実に、自分と同じく女性にもてない、スタイルにしろ態度にしろスマートということばから縁遠い主人公に自分を重ね合わせてしまいます。
 ざっとあらすじを紹介すると、主人公の田西は弱小ガチャガチャメーカーの営業マン。同じ会社のちはるという清純な女の子の事をいいなと思っているものの声もまともにかけられないくらい恋愛に不器用。そこでライバル大手メーカーのイケメン営業マンの青山に協力を要請、彼の力で少しずつちはるとの距離を詰めていけるかに見えたが、とある事件で縁遠くなった間に、青山にあわれちはるちゃんの処女は奪われてしまいます。というよりは、完全にちはるちゃんの方がのぼせ上がっていて、半分奴隷状態になってしまいます。ついには、自分の部下ともやらせたり(のってしまうちはるちゃんも問題ありだが)、彼女の流した新企画をぱくって彼女を会社にいられなくしてしまいます。あげくには3ヶ月ほど遊んだ上で妊娠した彼女を振り、堕胎費用だけを田西に渡して終わらせようとします。しかもその堕胎費用は別の青山の彼女にもっていかせる非道っぷり。ここで逆上した主人公の田西は、青山に決闘を申し込みます。
 こうと書くと主人公のこの健気さ、一途な気持ちにヒロインもさぞ心揺さぶられようというものなのですが、彼女は主人公にはあなたには関係ないのにと否定的な態度をとりつつも、まんざらでもなさそうな様子を見せるくせに、実は全くなびいておらず。あろうことか、この決闘の為に田西が特訓していた必殺技を青山にこっそりと教えたりして、自分の為に戦うヒーローよりも、自分を捨てた男に少しでも媚びて好意をもってもらおうという作戦に出ます。結果は、もちろんのこと、主人公の圧倒的な惨敗で、病院送りです。そして、ちはるもそれだけ尽くしてもやはり捨てられます。
 こうした一連の流れの中で彼女は田舎へと失意のうちに帰ろうとします。
 主人公はそれでも、可哀想な彼女のために病院のベッドから抜け出して彼女の見送りに行きますが、そこで彼女の口から出たのは青山の安否を気遣う言葉だけ。ついには田西も切れてわけがわからなくなります。。。。 
 てなことで、まぁなんとも報われない男の話なんですが、自分的にはすごくよく彼の気持ちがわかるし、どうにかならないものかと連載当時はやきもきしたものでした。あ、あらすじはざっと書きましたが、ここまでは第一部で、このあと第二部が別のストーリーとして幕をあけますのでご安心下さい。さすがに全話書いちゃうとまずいですからね。
 ということで、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」でした。

ボーイズ・オン・ザ・ラン 1 (ビッグコミックス)

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