「ラーメン屋vs.マクドナルド」 竹中正治著
本年319冊目の紹介本です。北野きいの「幸福の食卓」を見ながらぼちぼち打ってます。
最初はラーメンとマクドナルドのハンバーガーや、アメリカンヒーローと日本のヒーローの違い、アメリカのディズニーアニメと日本のアニメの比較から見えてくる文化的考察の話かと思いきや、そういうわかりやすい話から徐々に徐々に著者の本当に扱いたかった文化的な違いと経済行動の違いについての研究所になっていくという一冊。
なかなかに面白く興味深い記述も多かったですし、我々が今まで思い込んでいたことに対して、数字の裏付けから実はそうではないんだと論証していく部分にも説得力がありました。
例えば、日本では貯蓄の中における資金運用がリスクのある株式投資や証券投資等の分野にどうしても比重が高まらない。これは、日本人がリスクを避けるという民族的傾向をもっているからだというのが今まての通説でした。日本人は、いくら金利が低くても、株式や投資などで万が一失敗して貯金がなくなるよりは銀行などの確実な貯金を好むといった説が普通でした。しかし、著者はそこにメスをいれて、日本の場合は家というリスクの高いものに対してかなりの高額な投資を行っており、そこを考えると見事に諸外国と同じような資産分配をしていることになり、これは事実にあたらないと説明する。
そして、その数字的な裏付けとともに、アメリカにおいては家というのは通常は年収の高くても4倍から5倍程度で買えて価値の移動や破壊は進まないのに対して、日本の場合は、だいたいが年収の10倍以上ということになり価格や価値の増減が極めて大きい事実を提示している。確かにそれはなるほどと思う。
また、そうした日本人の投資に心理的な傾向を見るならば、今回のサブプライムローンに対してアメリカの金融業界が破綻して土地の価値や価格が買収したときに、アメリカの株式や土地を買いあさらないことのほうがより日本的だと述べます。経済の発展に金融が存在する以上、程度の差こそはあれバブルは必然であり、それであればこそ日本がバブル崩壊したときにハゲタカファンドと海外投資家たちが言われたように買いあさることこそが経済活動的には正しく、自然なことなのに日本はそれをしない。それこそが日本的であり、国の機関投資家が動かないのであれば個人でハゲタカ化してアメリカ経済をついばんでみてはとも言います。
確かにこれは日本的ですね。そうそう、日本的といえば、本の最初のほうで大統領選挙や首相選挙、演説のときに、日本では「努力」や「危機」などのネガティブな言葉が圧倒的に多いが、アメリカではそううネガティブな言葉はまず出ず「希望」や「未来」という言葉のほうが圧倒的に多いということも語られていました。確かに、日本は「このままいくとまずいから、危機感をもたなきゃならないから」と危機感を煽ることで全体が動いていくパターンのほうが多いですから、これは国民性といえるかも知れません。
ということで、面白おかしく話にのっていくと今現在のアメリカや日本の経済のことが見えてくるというなかなか面白いことでした。サブブライムローンの話や、「金融安定化法案」でも全世界株安が押さえられなくなっているこの世界の現状を見越したような話もでてきて、なかなかに時代性もある本でした。
ラーメン屋vs.マクドナルド―エコノミストが読み解く日米の深層 (新潮新書)
- 作者: 竹中正治
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/09
- メディア: 新書
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