小説・漫画好きの感想ブログ

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「言いたいことが確実に伝わる17秒会話術」安田正著

 こう見えて、自分には悩みがあります。
 それは、人に自分の話す言葉が伝わらない、印象に残らないという事です。印象的な言葉を語る人というと変ですが、言葉がすっと胸に残ったりその人の一言一言がくっきりと記憶に残る人っているじゃないですか。それに比べた時に、自分の台詞ってのが経験的に客観的にいって全くといいほど残らないタイプの人間だというのが自分の一つのコンプレックスであり悩みなんです。伝えたはずが、ものの見事に全く記憶に残っていない。たくさん当時の状況を伝えたり、メモとか見せて、ようやく「そういえば」とか「言われてみればそんなことをきいたような・・」というような反応になることしばしば。最初は、うっかり忘れてた仕事だからそんなごまかされ方をするのかなと思っていたんですが、さすがに20年近くいろいろな人と話しててそういうことが山のように出てくると、これは自分の話し方や雰囲気作りとか話し方に問題があるんじゃなかろうかと思う訳です。
 (まぁそういうタイプなもんで、関係がうまくいっている相手はなんとなく好意をもってもらっているうちはいいんだけれど、そうでないとありとあらゆる事柄が「きいていない」となったり、言葉で理解させたことがあっという間に消えてしまう)
 そんな悩みがあるもので、この本、発売と同時に買って来て読んでみました。
 基本的には、人間の記憶というものからのアプローチで、17秒以内の内容のある事柄でないと人はきちんと記憶できないというところからのアプローチで、物事を話すときには伝えるべきことを全体から俯瞰して17秒にまとめて話すようにしなさいといういたってシンプルな本です。それだけだとあまりに無駄な買い物でしたが、物事がよく伝わるか伝わらないかというものを研究していくと、共通の文化や、メンタル構造や、共通のものごとへの認知度によってそれは大きく変わるという話が出て来て、そのあたりは結構面白かったです。
 どんな話かといえば、日本人は世界でもかなり特殊に意思疎通を具体的な会話に頼らない民族だそうで、それは何故かといえば同じ言語(共用語・共通語という意味ではなく母語として)を話すので微妙なニュアンスが伝わりやすい。また、精神的な構造が似る原因となる同じような環境で生まれ育った人だと、価値観や考え方が似ている人が多い。だからこそ、なんとなくの雰囲気や指示語とかでだいたい話が伝わってしまう。逆にいえば、価値観や知識が違うとなかなか話が通じない、伝わっているようで全然違う風に受け取られているというような話です。
 確かに、自分が生きてきた中で振り返ってみると、あてはまる部分も多く、そのあたりは面白かったです。  
 例えばここに二人の同僚がいて、どうもそりがあわない。そこで問題解決のために上司に相談して「より分かり合う為には、コミュニケーションが大事だよ」といわれ二人はそれで納得する。そして、それを実現しようと二人とも頑張るがなかなかウマくいかない。むしろ余計こじれる。なんでだろう? と突き詰めて考えて調べてみたら、二人は同じことをきいていたのに、全く違う解釈をしていたとか。
 Aさんにとっては、上司のそれは飲みニケーションというような仕事以外でのつきあいや飲食をともにすることを意味しており、Bさんが仕事上の話を今まで以上にすることが余計にカンにさわってしまった。しかしBさんにとっての上司のそれは、今まで以上に仕事上の伝達についてのコミュニケーションをもっと密に取り、システィマティックに処理するために徹底した打ち合わせをすることで、それなのにAさんは仕事の話そっちのけで飲みにばかり誘うのが腹立たしく思って、とか。どちらも善意ではあるし、真剣に言葉をきいているんだけれど、共通の基盤や価値観・言葉の受け取り方が違うから本当の意味で言いたい事が伝わっていないんですよね。
 そういうケースが自分にはなかったか色々考えながら読むとけっこう興味深かったです。17秒、の話はたったそれだけ??? というようなレベルだったのだけれどね。

言いたいことが確実に伝わる17秒会話術 (アスカビジネス)

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