小説・漫画好きの感想ブログ

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「現代の貧困 ワーキングプア/ホームレス/生活保護」

 病気のときに読みました。読んでいてますます暗くなっていくような本をどうして読んでいたのだろうという気がしないでもありませんが、手元にあって読んでいました。
 タイトル通り、現在の日本の貧困というものはどういうものか、実際のところそれは増えているのか減っているのか、生活保護についての問題点は何なのかというようなことを説明してく本で、啓蒙書というよりは分析の書といったものでした。なので、それを解決していく為にどんなことをしていけばいいのか、どういう視点からの解決が必要なのかといった事はありません。とりあえず貧困というものについて、定量的・科学的に分析した本ですので、どちらかといえばそういう事をテーマに何かを語ったり、政策立案の資料に使ったりといった読み方が正解な本なので、とうてい一般向けではなかったです(ここでいう一般向けというのはなんらかの提言がなされたり、意外な事実の紹介があったり、今後の予測がでたりとする、なんらかの主張が背後にあって読む人の気持ちに訴えるものがあるかないかという意味です。内容のレベルの高い低いではないです)。
 なので、ブログ的に取りあげるような事柄があまりなくて紹介には苦慮するのですが、興味深いデータといえば、一般の概念と正反対のところや補強するようなデータは数多くでてきます。例えば、正反対のところで言えば、最近ではおなじみになってきた感もありますが、多くの人は日本が貧困という言葉のさまざまな側面の最大公約数で定義される貧困率でいえば、世界で二番目の貧困大国です。日本国民の多数は実は貧困の状況に陥りつつあります。また、補強するようなデータということでいえば、一時的な貧困ではなく長期的な貧困ということでの追跡調査でいくと、学歴と貧困の間・離婚と貧困の間には明らかな関係があります。あくまで確率論の話ですが、男性側でいえば、学歴が低い場合が貧困になる確率はもっとも高く、女性の場合は離婚することで貧困に陥るケースが圧倒的に多いです。なので、組み合わせでもやはり低学歴の男性と結婚後離婚した場合は貧困に陥るケースが圧倒的に高くなっています。
 こういう事書くと学歴偏重のような感じに受け取られそうでかなり怖いんですが、統計的にはそういうデータが確率ではじき出されています。高い学歴をもっていても、貧困に陥るケースは数多くあるだろうし、離婚しても裕福な女性達もいますが一般にはそうならないケースのほうが他の場合よりも多くなるという事が数字的にでてきています。
 そして、恐ろしいのはこうした場合別のケースを問わず、どの場合でも一度貧困に入り込んでしまうと出れなくなってしまうケースが現在日本では非常に高くなってしまいます。偶然にも今日日雇い労働者派遣のグッドウィルが派遣業から廃業するというニュースがありましたし、先日地元大阪の西成では日本ではここだけといわれて不名誉な記録ですが再び暴動が数日間あったりしましたが、このあたりもこういう時代には大きく影響しているのは間違いないでしょう。

現代の貧困―ワーキングプア/ホームレス/生活保護 (ちくま新書)

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