小説・漫画好きの感想ブログ

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「夏目友人帳」 緑川ゆき著

 夏目友人帳の3冊目です。
 来年の春にはアニメの第2シーズンが放送されることが決定されている本作は、妖怪と人間たちの間の物語としてとても上質で心地よい漫画です。最近の妖怪と人間の間の物語でバトル漫画にならない漫画といえば「もっけ」「蟲師」が頭に浮かびますが、あちらはバトル漫画ではないぶん、妖怪たちはあくまで別種の生き物であり人間のような知能をもった種族といった感じではなく、あくまで目に見えないだけで別の生き物が棲息しているという感じの雰囲気です(もちろん、民俗学者が喜ぶような神やヌシが登場して、彼らは大変に知能も能力も高いですがそれは両作では例外的です)。
 しかし、この「友人帳」に出てくる妖怪達は、ただ単に存在しているというだけでなく、それぞれがそれぞれの暮らしをしており、それぞれの個体がしっかりとした意志を持っております。中には人間に対して悪意をもった存在も多々います。しかし、多くはほとんど人間と意思疎通ができないために奇妙に人間に興味をもち人の子を愛する者もいます。そうした様々な思惑や感情をもった妖たちとと夏目がかかわっていくのがこの夏目友人帳という物語なんですが、概してこの物語はとても愛に満ちています。
 人によってはこそばゆいと感じるくらいの、他者への愛や優しさ、共感できることへの慶びが全体に溢れています。前述のように人を嫌うものたちも多々出てくるのですが、主人公の夏目と用心棒のにゃんこ先生の愛くるしいキャラクターのおかげで、それらを含めても全体的には愛や赦しがテーマになっていて読んでいて温かな気持ちになります。
 これには、絵と話の相性もよかったのでしょう、すごく繊細で綺麗な著者の緑川ゆきさんのタッチが実にはまります。

夏目友人帳 3 (花とゆめCOMICS)

夏目友人帳 3 (花とゆめCOMICS)