小説・漫画好きの感想ブログ

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デスノート 大場つぐみ 小畑健

 こんばんは、樽井です。 
 デスノートのスペシャル版を見なくてはと思いながら帰ってきたら、すでにデスノート始まっていました。9時からだと思い込んでいたら、8時からだったんですね。大ショック、阪神タイガース速報の方ばかりに意識が行っていました。なんせここんとこ調子悪いので目が離せないのです。
 それはそれとして、デスノート藤原竜也くん松山ケンイチくんの実写版のほうもアニメ版のほうもなんだかんだといって、大盛況ですね。松山ケンイチくん主演で「L」の特別映画もスピンオフで出来るようだし、まだまだデスノートの余波は続くようです。
 さて。
 よくよく考えたら、この漫画の話をちょくちょく出しているんだから、この漫画そのものの紹介というか書評というかそういうのを出さないのはアンフェアかと思うので、あとでちよっとそれをやりますね。

 さて。
 今さら紹介というのも間が抜けた話くらい認知度が高いデスノートです。
 週刊少年ジャンプ連載の歴代漫画の中でも群をぬく文章量の多さを誇る、サスペンスミステリ漫画です。主人公は高校生の夜神月(ライト)、頭脳明晰にして正義感の強い彼が、名前を書くだけで人が殺せる「デスノート」というノートを手に入れたところから物語は始まります。すでにデスノートという作品が認知されているから気にならないかも知れませんが、突飛な発想です。発想のもとでいえばヒーロー好きの高校生が書けばなんでも実現する「ドリムノート」というノートを手にいれたところから始まる某作品と一緒といえば一緒です(注、その作品自体好きですよ、けなしているわけではないので念のため)。
 ただ、こちらのデスノートの方がこれだけブームになったのにはそれなりの理由があります。一つには、「ヒカルの碁」から一気に上がってきたすべてにリアリティを与える小畑健の画力(リュークやエルを含めたデザインの)、そして超高度な推理合戦の醍醐味、最後に「果たして正義のもとであれ個人による世界の統治は許されるのか」という哲学的なテーマが揃っていたからです。たぶん、これらのうちのどれが欠けても、デスノートはここまで人気のある作品にならなかったと思います。この三つが揃っていて、はじめて幅広いファンに受け入れられたのだと思います。
 あと、もう一つ付け加えるなら、ノートというありふれたものが小道具になっていて「ごっこ遊び」が簡単というのもあったかも知れませんね。
 それはさておき、そういったわけで広く受け入れられたデスノートですが、主人公であるライトの性格を徐々に変化させていったのも、作品の重みとして見逃せません。
 作品が長くなっていくにつれて辻褄があわなくなっていく部分が、構造的にどうしても長編漫画にはありがちです。例えば主人公の出生や兄弟関係、敵役のインフレな強さや初期目的の喪失など、どうしても仕方がない部分が出て来ます。ひたすら敵と闘っていく作品であってもそうなのに、この作品では主人公が犯罪者として追われているという立場上、そうした引き延ばしが本当は極めて困難な作品です。ですから、この作品でも残念ながら、第二のLであるニアやメロの登場あたりからどうしても無理が出て来て、作品としてのクオリティは落ちていったと思います。
 しかし、ストーリーを破綻させないように、そのあたりを主人公であるライトの性格の変化。具体的にいえば、絶対的な死を操る力とあまたの智慧比べでの勝利の陶酔から、ライトの自意識が肥大していっているという事でうまく辻褄をあわせていったあたりが他の後半に決定的に無理がでてつまらなくなった作品と一線を画したと思います。もちろん、無理はあり、本来であればキラ対エルの決着がついたあたりで完結したほうが作品的には絶対によかったと思います。そのあたりは非常に残念ですが、それを、主人公の性格の変化、「神」のように自分を錯覚していくことでの自意識の肥大というキーワードでうまく処理しようとした大場さんと小畑さんの努力のあとが見えます。そしてその緊迫感が読み手にも非常に伝わっています。
 そうした予想外の効果も含めて非常に素晴らしい作品に仕上がったのがこのデスノートという作品です。
 哲学的なテーマもキャラ萌えも心理戦もデザインも見せ方のスタイリッシュさもどれをとってもよく出来た作品ですので、漫画は子供だけのものなんていう風なくだらない偏見を捨てて、ふだん漫画を読まないというにも是非一度読んでみて欲しい作品です。

DEATH NOTE デスノート(1) (ジャンプ・コミックス)

DEATH NOTE デスノート(1) (ジャンプ・コミックス)