小説・漫画好きの感想ブログ

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泥棒は深夜に徘徊する

 
 本の紹介をする前に一つだけニュース。
 「イミダス」と「知恵蔵」が休刊(事実上では廃刊です)になったという話。どちらも、「現代用語の基礎知識」同様に最新のはやり言葉や新しい言葉をとりいれた現代用語辞典として最初はそこそこに部数も出ていたのが最近はひたすら凋落の一途ということで休刊になったようです。分析的にみれば、わからない言葉はすぐにネットで、それこそグーグルやはてなですぐに調べられるようになってしまったので本としての価値を失ったからということなのでしょうけれど、ちょっと寂しい気がしますね。立ち上げたものが時代にあわなくなってしまうと、別の形で生き残ることができない社会というのは危険な気がしますし。
 びっくりラーメンが倒産して吉野屋に買収されたというニュースもそうでしたけれど、業績が順調でも何があるかわからない、危険な時代になりました。ある意味、昔の終身雇用のほうが日本人のメンタリティにはあっていたのではなんて思ってしまいます。
 さて。

 泥棒バーニィ・シリーズの第十作です。
 日本で訳されている分では最新刊ということになります。
 主人公のバーニィ・ローデンバーは生まれながらの大泥棒。ただし、暴力沙汰は大の苦手で強盗もダメ、血を見るのもダメ、倫理的にひどいやつも苦手、でも他人の家に忍び込んでくつろぐのが大好きという困った人物。ふだんは古書店の店主として、本に耽溺する生活ですが、泥棒稼業をやめることはできなくて、定期的に行っています。
 今回彼はひょんなことから、表に出せない金を金庫に溜め込んでいる家の情報を友人から仕入れます。友人からすればそれはささやかな復讐で、彼の彼女を横取りした相手に対するためのものでした。事情はどうあれ、バーニィからしたら美味しい仕事ということで、決行予定の金曜日の前に下見に出かけます。
 ただあくまで下見ということでその家には盗みには入らず、帰りには念のため全然別の地区の家で泥棒をしに入った彼ですが、運悪くちょっとしたトラブルに巻き込まれて朝帰りとあいなります。しかし、帰って来たらびっくり、いきなりもう警察に逮捕されてしまったのです。しかも下見に行った地区の別のマンションでの強盗殺人容疑です。不幸なことに、下見にいった地区の防犯カメラに彼の姿がばっちり映っており、実際には事件にまったく関わってはいないのに彼の犯行と見なされてしまったのです。
 彼を逮捕した刑事レイ・カシューマンは彼の性質をよく知っていたので殺人までは彼の仕業ではないだろうと思いつつ、事件への関与は疑い逮捕したのでした。まぁ、しかし、証拠があるわけではなく帰途につくバーニィ。しかし、今度は自宅が強盗に入られていて。。。。 
 と、今回はシリーズでも屈指といっていいほどプロットが錯綜しています。いろいろな事件や犯罪やグループが複雑に絡み合っていて、実のところ最後迄いっても全ての謎がすっきり解決というわけにはいかないくらいです。このあたり、ローレンス・ブロックの風呂敷の広げ過ぎとみるか、そういう錯綜を一つの手法とみるかで評価は別れます。個人的見解としてはちょっと広げすぎたのかな、辻褄の調整に苦労したかなという感じを受けました。
 とはいえ、バーニィシリーズの特徴である軽妙さや、泥棒のくせに妙に倫理的というかおひとよしのバーニィの人間的魅力はいつも以上に出ていたし、シチュエーションコメディとしての楽しさ、謎解きのレベルも結構高かったりはするので、やはりミステリ界の大ベテランの作品だけのことはあります。だから、さきほど挙げた瑕疵を入れても5段階の3評価をしたいと思います。