小説・漫画好きの感想ブログ

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The Book 乙一 ジョジョの奇妙な冒険第四部スピンオフ 大絶賛 

大絶賛です。是非読んでいただきたいと思います。

「The Book」 乙一著 

ひさびさに文句なく傑作の本でした。
年に数度出る「こ、これは」という「当たり本」の一冊だと思います。
この本、実は「ジョジョの奇妙な冒険」という週刊少年ジャンプで人気を博した連載漫画の第四部「ダイヤモンドは砕けない」の登場人物の一部と設定を利用したスピンオフ小説なんですが、、「ジョジョ」を知らなくても楽しめる、いや、知らなくても普通に小説として大人が読んでも読み応えがあるレベルの小説に仕上がっていますので、あえて強くプッシュ致します。

物語の舞台は宮城県の仙台市杜王町
意味深な序章のあとで始まる物語は、有名な人気漫画家とその町に通う高校生の男の子がコンビニの前で血まみれな猫が歩いているのを見かけたところから始まります。猫の飼い主を突き止めた二人がその家で見たものは、家の中で無惨な姿で倒れていた織笠花恵という女性の死体だった。しかも、死体は奇妙なことに、家の中であるにも関わらず車ではねられたような死に方をしていた。
一方、同じ高校に通う女子高生・双葉千帆は、町にある図書館で蓮見琢馬という先輩と知り合っていた。琢磨は誰にも秘密にしていたが、生まれてからの全てのことを記憶していた。誰がいつどこで何をしていたのか、一度見た顔や交わした会話を全て覚えていた。比喩でなく「生まれてから食べたパンの枚数」を覚えている学生だった。。
彼等の運命が交差するとき、琢磨の過去にまつわる事件は不可避の運命として、周囲に新たな悲劇を生み出していく。。。。 
ミステリとして読んでもいいし、とあるサイコキラーの物語として読んでもいいし、報われない悲恋の物語として読んでもいいし、超能力もののSFとして読んでもいいと思います。この小説は、いかなる要素で読んでもきちんと出来上がっていて、なおかつ全てが融合していて、奇妙な味わいの小説として文句なくよく出来ています。
ネタバレになるのであまり詳しくは書けませんが、これは出来れば出来るだけ多くの人に読んで欲しい小説です。
ジョジョファンなら勿論、いやむしろ、そうでない人にも是非読んで欲しい小説です。

というのも、出来がいいだけでなくて、(このポイントをプッシュすることはひょっとして小説を評価するときにはフェアな事ではないのかも知れないけれど)これは、人気作家だった乙一が、他の仕事を殆ど投げて5年の歳月をひたすら集中して作りあげた小説でもあるからです。
乙一は、ご存知の通り、齢わずか16歳にして「夏と花火と私の死体」という作品で鮮烈なデビューを飾った小説家ですが、最初の数年は多作の作家といってもいいくらい作品を大量生産していました。その中には「天帝妖狐」や「失踪HORIDAY」「暗いところで待ち合わせ」「死にぞこないの青」などの傑作が含まれます。それが、突然ピタリと作品が出なくなります。数年間にわたる沈黙。その間、彼が何をしていのか。実はこの作品を書いていたのです。
彼は、漫画のノベライズ、設定を使ったスピンオフを書いては消し買いては消し、完成させては破棄し、と都合5作品。完成させては没にするを繰り返し、2000枚に渡る小説を書いたといいます。そして、その中で残ったのがこのバージョン「The Book」だそうです。当然、5年もの沈黙のために収入は途絶えましたが、それでも彼は思い入れのある「ジョジョ」という漫画のために、彼がデビューしたときに連載していて、自分のデビュー作の背景にはそれがあったという「ジョジョ」のために孤独に仕事を続けたのです。
それがこの本です。

読んでいる途中にワクワクする小説はたくさんあります。読み終えて、ラストのあれこれについて思いを馳せながら深く満足する小説もたくさんあります。しかし、あとがきを読んで、しみじみ納得してこれは人に伝えなくてはと思った小説はひさしぶりです。
たぶん、これを読んだ人にはそういう想いが伝わったのでしょうね。この小説は装丁や中に仕掛けられた本としての仕掛けの数々。当然ながら、荒木飛呂彦が描いているイラスト。それらの全てがちょっと別格です。いわゆるノベライズ、漫画の小説、ではありません。
是非読んでいただきたいと思います。
それも出来れば、もう絶版になってしまっているようですが出来ればこの茶色いハードカバーで読んで欲しいです。普段の僕はたいていは文庫で買う、ハードカバーにこだわらない人間ですが、これについてのこだわりは小説を読めば理解していただけると思います。
(といっても、絶版なのでアマゾンの中古品←なのにコレクターズアイテム化しているらしくあまり値段は落ちていないです。文庫で読むのもありだとは思いますが、新品にこだわるのでなければ絶対に手に入らなくなる前に入手するのであれば中古版をお勧めするくらいです)

The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day

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The Book jojo's bizarre adventure 4th another day (JUMP j BOOKS)

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ジョジョリオン 4 (ジャンプコミックス)

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