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小説フランス革命8 佐藤賢一

「フィヤン派の野望 小説フランス革命8」 佐藤賢一著 

小説フランス革命の8巻です。
今回の主役は、前半はルイ16世、後半はバスティーユ監獄の英雄デムーラン。
1789年のフランス革命から2年後、権力をおさえられていたフランス国王ルイ16世はその妻マリー・アントワネットや子供達と一緒にフェルゼンのたてた計画のもとパリを脱出。しかし、フェルゼンの杜撰な計画と彼のミスにより、幅な計画の遅れから、ルイは国境付近の街で補足され、現地で待っていたヴイエ将軍と合流することができずパリへと連れ戻される。
これが世にいう、ヴァレンヌ事件である。
しかし、無事に王を補足して連れ戻した議会ではあったが、フランス憲法の発布を目前にして、「王が逃亡した」という事実や、あつまさえそのことによって一部論客が廃位や共和制などという事を言いだしては都合が悪いと考える三頭派や平原派などは「王は誘拐されたのだ」として王に対して審問も裁判も行わず、超法規的措置で事態を乗り切ろうとする。
その中で、ヴァルナーブら三頭派は、革命の旗印とも言われたジャコバンクラブから離脱、自分たちこそ正当派閥としてラファイエットらも巻き込みフイヤンクラブを設立。ロペスピエールらジャコバンの民衆サイドにたつ左翼主義者たちを潰しにかかる。。。
というのが歴史のお話なんですが、、この小説を読むとこのあたりの流れがとてもよくわかる。学校で歴史を習ったときや、他の本ではピンと入ってこなかった複雑でこみいった流れがとてもよくわかります。するするっと頭に入ってきます。
これはもうひとえに、著者の佐藤賢一の筆力によるものと言う他はありません。彼は自分がこのフランス革命を書く力を得るまでに十年かかったとどこかで述懐していました。ネタとしてはいつでもかけたが、そこに血と肉を入れて物語として世界を作り上げるにはそれだけの時間、修行が必要だったと語っていました。
そして、これを読む限りでは、その効果というか結果は見事でていると思います。真面目で、それなりに物事を考えて開明的で国民のことを好きだった筈のルイ16世がいかにして歴史の波に翻弄されていったか、フランス革命がいかにして起きて、その中で、自由とか基本的人権という理念がどういう理想と現実の間でときに戦ったり妥協されたりしてきたかがよくわかるようになった気がします。
ここから先には、もちろんのこと王や王妃のギロチン台での処刑や、議会内部での権力闘争やロペスピエールの激変などがあるはずですが、それを読むのが今から楽しみです。