小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

「異体字の世界」 小池和夫著 マニアック

異体字の世界」 小池和夫著 マニアック

 異体字とはなんぞや?
ということに、トコトンつっこんでつっこんで語られる蘊蓄本です。
 ものすごく大雑把にいうと、異体字というのは同じ意味をもつ「同じ文字」を指すのだけれど、書き方が違ったり形が違ったりする別の文字をいいます。だいたいは同じような振る舞いをするし、一定数は存在するという意味では元素の同位体とも似ていますが、いろいろな理由や変遷を経て、パソコンや文字コードの発展等もあって、日々増え続けているというのが一番の違いでしょうか。
 例えば、「沢」と「澤」。これはどちらも音読みでは「たく」、訓読みでは「さわ」、意味も同じでどちらで置き換えても問題は起こりません。或いは、近藤さんの「近」、これが「近」あっても、しんにょうの上にさらにもう一つ点がついた「近」であっても戸籍だのはんこだのが絡まない限り大丈夫でしょう(ちなみに樽井の樽は機種によっては上が八の字だったり、尊のようにちょんちょんだったりするので、銀行で自動発行や通帳の自動更新がしてもらえなくて面倒きわまりないです)。
 しかし、これが同じ異体字でも、「花」と「華」ではどうでしょう、どちらも音読みは「か」訓読みは「はな」ですが、華道はあっても花道(ただし桜木は除く)はなく、中華料理はあっても中花料理はないといったように、感じの成り立ちから象形文字か形声文字かで違うと互換性がなくなってしまったりととかくこの異体字問題はややこしいのです。
 「咲」と「笑」という字がもともとは異体字で同じものだったと言われても、もうわけがわからないという人が殆どでしょう。

 なので、この本、一般にはあまりお勧めしません^^
マニアックな活字中毒者だけが、そういわれてみれば、、、と興味をもつくらいかと思いますし、これを読んで興味をもった人がいれば、その人は小説愛好家ではなく活字中毒者だと思いますので、そういう意味では活字中毒患者のあぶり出しの一冊というようなものかも知れません。


異体字の世界―旧字・俗字・略字の漢字百科 (河出文庫 こ 10-1)

異体字の世界―旧字・俗字・略字の漢字百科 (河出文庫 こ 10-1)