小説・漫画好きの感想ブログ

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「オー! ファーザー」伊坂幸太郎著 感想 

この物語の主人公・現役高校生の由紀夫には、父親が4人いる。
やんちゃな鷹、女にモテモテの葵、真面目な大学教授の悟、マッチョな中学教師の勲。個性豊かな四人の父親達たち。誰が本当の父親かはわからないまま、彼は父親達と母と暮らしている。
四マタをかけていた母親はもちろん、父親たちも自分じゃなければ嫌だとびびってしまってDNA鑑定を受けようとせず、わからないままズルズルと高校まできてしまった。それぞれが過保護なまでに彼を好きで、我こそは本当の父親だと疑って譲らない。
そんな特殊な家庭で育った由紀夫が巻き込まれる一夏の冒険物語が、本書、「オー! ファザー」だ。県知事選挙まっさかりの田舎の町で起るさまざまな事件は、最後にあっと驚く事件と解決に綺麗に収束していく。。。

いつもの伊坂作品と同じく、主人公をはじめ登場人物たちは皆飄々として味がある。途中に出て来たいろいろな事柄は全てが伏線となって最後にきっちりとまとまって回収される。そんなところも伏線だったの? と思わせる綺麗な拾い方で最後のカタルシスが、いつものことながら素晴らしい。
(著者によれば、作品内容や書き方でいえば、この「オー! ファザー」までが一期、「ゴールデンスランバー」以降が二期とということになるようだが、確かに初期作品のほうが伏線の貼り方とその完璧な回収具合は強いかも知れない。デビュー作の「オーデュポンの祈り」や「ラッシュ」などは完璧すぎるくらい完璧であるし)
これはもう読んで楽しんでもらうのが一番の作品なので、これ以上くだくだと内容については書かない。が、伊坂作品独特の楽しさ、軽さ、軽妙なやり取り、ちょっとした警句は、期待通りの確実さで、文句なく過不足なく全部まるごと綺麗に入っているので安心して読んでいただきたい。

ここからは個人的な感想だが、正直こういう家庭というのがちょっと羨ましい。
普通の家庭ではないけれど、愛があって賑やかでいいなと思う。
うちは、小さい時に父親と別れたし、高校からは一人暮らしをしていたから、こういう自分より大きい人、親っていう存在が本当はどんなであるのかが本当のところではきっとわかっていないと思う。だからこそ、こういう家族愛的なものにはちょっと弱いのだ。
特に父親ものには。
尊敬できる父親がいるとか、いつまでも背中が見える父親とかって、きっと素晴らしいし自分のお手本になるんだろうなぁ、、、なんて思ったりする。まぁ、ないものねだりしても仕方がないんだけれどね。

オー!ファーザー (新潮文庫)

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