小説・漫画好きの感想ブログ

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映画「終戦のエンペラー」感想

終戦のエンペラー、公開初日に見てきました!
一言、いい映画でした。
史実に基づきつつも、焦点を絞り込むことによってとてもまとまりのいい映画になっていました。

1945年、日本は天皇陛下の玉音放送により敗戦・終戦を迎えた。
日本占領統治総の指揮官としてやってきたマッカーサー元帥は、つれて来た部下の一人に一つの命令を下す。「天皇に戦争責任があったかを徹底的に調べよ」と。この時本国アメリカとワシントンでは天皇を裁判にかけ処刑を求めるという声が圧倒的だった。しかし、マッカーサーは日本統治の為には天皇を残した方がよいか、それとも状況によってはやはり処刑すべきかを秤にかけていた。彼にとっては日本の安定統治こそが至上命題であり、それには天皇を残すべきだろうとは思うものの、実際の状況次第では処分しなければならないとも考えていた。しかし与えられた余裕はわずかに十日間。
そこで、彼は日本通でもあるフェラーズ准将をその任にあてる。フェラーズは天皇を残すべきだという信念をもっており、天皇を中心にした日本政治の中枢人物たちに、「戦争を決定したのは誰か」「天皇は戦争に関してどう思っていたか」「開戦を止めれたのか」の必死の調査を始めるが、意外にも日本人たちの口は堅く、遅々として調査は進まない。
そして、その調査と平行して、彼には実は密かな目的があり、自分に割り当てられた運転主権通訳の髙橋という男に「アヤ」という人物を探させる。実は、アヤは、フェラーズが日米を行き来しつつ愛した女性だったのだ。フェラーズは、天皇の戦争責任の有無の調査の傍ら、彼女の行方を追う。。二つの調査の結末やいかに。
物語のラスト10分。タイムリミットの当日、調査の果てについに、昭和天皇とマッカーサー元帥の会談が始まる。。。。

フェラーズ准将とアヤの恋愛はフィクション(日本に親しい女性がいたのは事実)なのですが、そのフィクションとはいえラブロマンスがあるおかげでかえってこの映画はとても気持ちのよい映画になっていますし、バランスもよくなっていると思います。たぶん、戦争責任についておいかけるだけだと、ギチギチの理詰めの映画になって世界的にも見る人は少なかったかと思います。
また、バランスといえば、三ヶ国が絡んだことでもバランスはよくなっています。もともとの発案が本作中でも登場する宮内省の関谷さんの孫という日本人プロデューサー、それをもとにプロットや事実調査なども含めてシナリオを何度もリファインしたのがアメリカ、そして監督が第三国のイギリス人。彼等は戦争について直接的に関わっていないことと、天皇制についても王家をもっているが故にその存在についての感覚はアメリカ人では出せないフィーリングが確かにあり、この三か国での調整があったことが見ていて、変にプロパガンダ的にならずにいいバランスで仕上がっていると思います。
もちろんアメリカ映画なので、アメリカが一番美味しいようにみえますし、主人公のフェラーズくんはめちゃめちゃいい男で格好良く描かれています(史実での彼は別任地でポカがあったり、のちに降格もさせられたり順風満帆の男ではない)し、日本人はちょっと曖昧で戦争責任について国としてはもちろん個々の人物が責任感がうすいように描かれています。が、それも程度問題で、変に日本人を下げたり、マッカーサーを持ち上げたものでもなく、最後には昭和天皇が本当に数分の登場でいいところをしっかりともっていくので(史実ですから十分胸を張れるところです)、十分いいバランスだと思います。
なので、公開前はどんなんだろうと色々考えながら見にいったんですが、これは十分初日に見にいく価値がある映画だったなぁと思いました。
キャストもハリウッド映画にありがちな外国人やへんてこな日本人が演じることはなく、故・夏八木勲を筆頭に、西田敏行、伊武雅刀中村雅俊などの名俳優が演じており、そのあたりも見応えがあります。特に拾いものだったのは、アヤを演じた初音映莉子。彼女が素晴らしく綺麗でシックで情感豊かで見蕩れてしまいました。彼女は映画「ノルウェイの森」のときも、風景以外見るべきものがまったくなかったといっていいあの最低ランク映画の中でも、彼女の登場シーンだけが圧倒的に素晴らしかったのですが、、その時には他のシーンが酷すぎるから余計に輝いているだけと思っていましたが、、、この映画で思いました。彼女は一級の女優さんです。
僕の中ではルックス的には全然ストライクでないんですが、それでも、その存在感や表情が「とても美しいし、演技がとてもうまい」と感じさせてくれます。これはもう才能だと思います。ハリウッドは今後日本人役の女優探すなら、へんにアジアの人にやらせたり、菊池凛子だったり、栗山千明だったりせずに彼女使って欲しいなぁ。。。。とと話が逸れました。

ともあれ、素晴らしくバランスもいい映画ですし、ちょうど時期的にも終戦記念日が近い夏休みでもありますし、中学生以上のお子さんとなら家族と一緒に見にいってもいいと思います。