小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

西尾維新「悲惨伝」感想

西尾維新と魔女っ子と。「悲惨伝」

魔女と聞いて、いや魔女っ子と聞いてどんな姿をイメージするだろう。
世代によっては、メグちゃんやアッコちゃんや、クリーミィマミだったり、プリキュアだったり、おじゃ魔女どれみだったり、セーラームーンだったり、色々別れることだと思う。
ただ共通しているのは、不思議なコスチュームに身をつつみ、ステッキだったりコンパクトだったりのアイテムをもち、何故かそんなに戦闘向きではないミニスカートをはいている姿だろう。
最近はその手のものを見る機会が少なく(まぁ当然だが)、とんと疎くなってしまったけれど、このへんの業界は仮面ライダー以上にお約束のスタイルというのを重要視しているようでかわりはない。と思う。

そして、これらの魔女っ子はあくまでアニメや、よくて漫画止まりのメディアで展開されているもので、ストーリー小説やらSFものに出てくることは普通ない。伝奇小説などで魔女そのものが出てくることはあるけれど、可愛らしい魔法少女というのが小説で出てくることはない。
しかし、それが出てくる小説があった。
しかも、その魔法少女たちが極秘作戦で小隊を組んで戦い、殺し合う小説があった。
さらにいえば、四国の中で魔術の暴走で人々のほとんどが消えてなくなってしまった世界で。。。
西尾維新の「悲惨伝」という小説がそれである。この小説は、もともとは「悲鳴伝」という小説の続きの「非業伝」さらにその続編という位置づけに当たる。もともとの「悲鳴伝」は地球が人類絶滅を願い、人類の1/3を殺し、人類の一部はそれに対して各地で地球撲滅を掲げて戦っているという奇妙にシュールな世界を舞台にした青春小説だったのだが、その続編の「非業伝」からはそんな状況下で起った四国の事件に主人公の空空空(そらから・くう)が向かってみたら、そこでは四国で地球と戦っていた「絶対平和リーグ」という組織の魔女っ子たちが、組織から支給されたいわゆるその魔法少女スタイルの武器とコスチュームに身を包み、それぞれの思惑にしたがって動いていたというかなりトリッキーなお話なのである。
空空は超科学の粋を極めた化学兵器を用いるが、彼女たちは支給品の魔法の武器を使って戦うのだ。「高度な科学は、魔法と区別がつかない」という話が、ここでは「高度な魔法は、科学と区別がつかない」ものとして登場する。
とても奇妙でおかしい小説なのだが、主人公の空空のキャラクターが特異すぎて、ツボに入るとかなり面白いシリーズである。いい意味で、よくもまぁこんな設定とお話の展開を考えつくものだなと思う。
ちょっと前に発売された別シリーズの「暦物語」がイマイチな感じだったので不安をもちつつ読み始めたが、これはなかなかに面白かったです。

悲惨伝 (講談社ノベルス)

悲惨伝 (講談社ノベルス)


悲痛伝 (講談社ノベルス)

悲痛伝 (講談社ノベルス)


悲鳴伝 (講談社ノベルス)

悲鳴伝 (講談社ノベルス)