小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

映画「風立ちぬ」感想 ネタバレありなしレビュー

映画「風立ちぬ」感想 1

どこから手をつけようかとあれこれ迷いつつの「風立ちぬ」レビューです。
基本的にはネタバレなしでいきます、、、(ネタバレ入るところはネタバレあり警報出しますが、基本なしです)まず思ったのは、思っていた内容と全然違ったなぁというものすごい肩透かし感です。
本作は、企画段階から零戦設計技師の話ということがまず聞こえてきて、次にご本人の口からも色々なところで過去最高の「反戦映画」にするという声が聞こえて来ておりました。そして、直前にはあの「戦争と慰安婦に関することは日本が悪い。謝罪と賠償はすべきだろう。領土問題で揉めているところは相手に与えるか、共同管理すればいい。憲法を変えるなどとんでもない」という発言でしたから、どれだけの説得力をもった反戦映画になっているのだろう、といういつもの映画鑑賞とは違う視点で映画館に臨むことになったのですが、、、、見て思ったのはこれのどこが反戦映画なんだろう?? ということでした。
確かに、戦争前後のお話を描いていましたし、貧しい世相なども出て来ますが、、えーっと、、なんていうか戦争と主人公達との関わりがほとんどないんです。他人事なんです。
これはネタバレにならないだろうと思いますが、主人公の二郎は、ゼロ戦の設計者になる人物で、作中でも三菱に所属してドイツのユンカース社まで技術研修に行ったり、日本の海軍や陸軍のために戦闘機の設計もしますし、戦争について漠然と考えますが「どこと戦争をするんだろうねぇ」「いずれ日本は破裂だね」と言いますが、さりとて何かそれに対して反対するかといえばしません。自分の飛行機への夢の為に突き進みます。いや、実際には突き進むというような強さや、葛藤はありません。当たり前のように作ります。そこに善悪の迷いはありません。
戦争に使われる、人殺しの道具になる、それは分かっていますが、それはそれ、これはこれ。時代に遅れにならないようないかに性能のいい飛行機を作るかにしか気持ちが向いていません。
だから、、、彼の性格がどうのこうのというのはさておくとして、これが反戦映画か? と言われると、、、???? となりました。

じゃあ、これは恋愛映画なのかと言われると、、確かにテレビでもさんざんやっていますのでこれもネタバレにならないかとは思いますが、主人公の二郎さんと菜穂子さんという一組の夫婦が出てきて、そこは一つの恋愛もの、いや夫婦ものとしてきちんと成立はしていますし、、僕がこの映画の中で一瞬ちょっと涙腺が緩んだのはこの二人の結婚式のシーンだけなので、、そこは評価したいと思うのですが、、、ですが、、、それならばそれできちんともう一つの側、堀辰雄の「風立ちぬ」を生かしているのかというと、、、、今日小説版を読んでいたのですが(これはレビュー参考してくださいね)、、、これがまた全然原作と違う。正直、名前だけを借りた別の小説といったほうがいい作品になっている。主人公の性格は二人とも真逆だといっていいほどに違うし、主人公たちが取る選択はことごとく小説の真逆、小説では避けたこと、やらなかったことのみをしていくといったほうがいい状態で、、、これは名前を使うことに何の意味がある? というか、これはジブリが単純に過去の名作として知名度の高い作品名を悪用した、利用したといったほうがいいんじゃないかというレベルなのです。
誤解のないように言っておきますが、この小説阪と映画版のどちらの恋愛ものの方が優れているとか、よく出来ているとか、感動するとかの優劣を言っているわけではないんですよ。実際問題、小説のそれよりも、映画のこちらの二人の方が僕は好きですし、ストーリーは映画のほうが好きです。ただ、それならば、原作を使う意味はないし、使うのはあまりに失礼に当たるという話です。
ジブリでひどい映画といえば「ゲド戦記」が原作を冒涜しているとして、原作者サイドに詐欺だとまで言われましたね
。でも、あれはストーリーの大幅な変更ではなく、説明不足、演出不足などなどのレベルの低さからくる冒涜でしたが、今回のこれは原作に対するリスペクトというか、原作の中の何をもってこの映画に使おうとしたのか、しかも名前まで借りたのか、ということに全くの論理的妥当的な理由が思いつけないということです。
繰り返しますが、どうして「風立ちぬ」を使ったのかが分からないという意味で、ちょっと解せぬ話です。

と、映画の中身の話や、演出がどうだこうだという話の前にえらくページ数使っちゃったので、この話続きをまた書きます。
結果的に、そっちは、ネタバレ阪ということで。。。
あ、そうそう。
ネタバレ以前にもう一つだけ。
この映画、色々と評価は割れるとは思いますが、、、これだけは間違いなく言えることは、この映画の価値は主役の二郎の声
を「庵野秀明」がやることで、、大きく価値が下がりました。
もうひどいのひどくないのって、、ひどいの10乗くらい酷かったです。棒読みとかいう以前の問題で、、、いかにも声優っていう人を使わないのがポリシーの宮崎駿監督にしたって、これはダメだししないとダメだったと思いますし、もしこれを「素晴らしい」と言うならお手上げです。確実に面白くなくする原因になしかなっていません。それでも、きちんと映画として見せるしある程度の感情移入をさせる手腕は、逆にさすがジブリ、と褒めるべきかも、あまりにもひどいです。もしこれが普通の役者さんや声優さんなら、もっともっと素晴らしく感動できる部分が増えたろうにとそれだけは本当に心底残念でなりません。
テレビで性格俳優を使うとか、異形の人を使うとか、そういう話ではありません(まぁ、ものすごく深読みしたら商業話題的にどうという意外に、映画演出的にこれでこの役者を使ったのかなというのはありますが、それにしても、、と思います)。逆に、ものすごく良かったのは、滝本未織さん。この方はアイドルというか女優さんで本職の声優さんではないんですが、、声の演技力がすごく高くて、泣きそうなのをこらえて話すシーンとかは
かなりぐっときました。
テレビドラマで見た時には、そんなでもなかったんですが、声だけになると(いやいや顔もすごく可愛らしい方ですよ。表情も豊かですし)とても情感豊かで、声優じゃなくても立派に主役がはれると思いました。それだけに、しつこいですが、庵野さんはなかったな、、と作品の為に悔やみます。