小説・漫画好きの感想ブログ

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白川敬裕の「憲法がヤバい」 これお薦め

 レビューの前に、、ブクレコで「3000」いいねになりました。ありがとうございます。キリ番踏んだのはMaiさんで、「ART of TEA」というムレスナティーの方の本でした。皆さんとやりとりしながらのブクレコ本紹介は本当に楽しいです。いろいろ紹介してもらったり、考えるキッカケになったり、、、、。これからも随分と偏りはありますが、いろいろな本のレビューを自分なりにアップしたいと思います。
 
 さて。
 今日紹介する本は、「憲法がヤバい」という本です。
 タイトルと帯カバーの「9条改正より怖い!? 自民党改正草案の罠」という惹句からして、反自民党臭がプンプンと漂っているのですが、、そして内容も自民党案に対しては、、かなり厳しい反対意見が続きますが、憲法問題のとっかかりにしてはなかなか良い本なのでお勧めします。
 (あとで詳しく書きますが、あくまで主張に全面的に賛同するとか、そういう意味でなく)
 というのも、この方の憲法に対する考え方はある意味首尾一貫しており、だから私はその立場からこう見るという意見をぐいぐいとストレートに述べており、それと同時に現代の憲法学の流れ、最高裁の判断についても例証を出しながら述べているので、論旨が明快でわかりやすく、自分の考えをもってこの本を読めば、対話をしているように読み進めていくことが出来るからです。今までいろいろなところから出てきていた憲法本は、ややもすれば解釈の羅列であったり、左翼的な護憲思想一辺倒でとにかく変えるな、9条は神聖であるというパターンか、そのまったく逆に押し付けられたものであるから意味や価値がないし変えるべきだという論調のものが多かったので、それに比べればずいぶんとまっとうな議論のたたき台になる本だと言えます。
 なので、ここはストレートな著者のスタイルにならって、本書の主要かつ本質的なところだけ挙げると、次のようになります。

 ・そもそも憲法は「国家ではなく国民が主権の、国家の行動に制限を与え権力を縛るためのものである」
 ・日本国憲法には、基本的人権自然権として定義されており、その基本的人権が制限されるような憲法はたとえ法手続きに則って改憲しても違憲になる。つまりその部分での変更は認められない。
 ・しかるに自民党草案は、国家が主体の国民を縛る・制限する憲法に変容しているので認められない(この根幹のずれが基本的人権から全ての問題に派生している)。
 ・例えば、それは97条であったり、天皇の位置づけであったり、国歌国旗に対してもおかしい。
 ・とはいえ、現在の憲法学からすると(特に芦辺理論と呼ばれる現在の法学者の主流解釈では)、9条は日本の自衛権を剥奪するものではないけれど、一切の軍備を放棄することを意味しており、軍隊は廃棄し、日本がもし攻撃された場合には、軍ではなく警察や民衆の蜂起・暴動のみで戦う「武力なき自衛権」のみが憲法的に正しいとされている。これではあまりにも弱いし、国民主権の本質からすると、その国民の自衛権を守るべき自衛のための軍備までも放棄させるのは逆説的におかしい。

 つまり、彼の場合は、護憲とはいっても絶対的な護憲ではなく、自民党の全ての政策に反対しているわけではなく、自分が考える「憲法はあくまで主権者である国民のための、国民に対しての国家の不当な干渉や制限を防ぎ、国民一人一人の財産・幸福・活動の自由を守るためのものであり、それに反する部分については憲法を改正することもあり」としているわけです。
 (だからこそ根っこのところで噛み合ってないので、自民党草案のたいていは納得できないし許せないと彼は論じているわけですが・・)
 ある意味、非常にわかりやすいです。
 
 僕個人としては、この考え方にはかなり保留がつきますし、この憲法がこうだから、ここに反する憲法は多数の意見であってもダメというのは、この憲法が絶対無謬なものであるのならまだしもそうではないことが図らずも露呈している現在では、あまり意味がない。憲法に関しては、そういう変な枠を取っ払って、考え直すにあたってタブーを設けたり改造したりすることに制限をつけるべきではないと思います。
 ただそれは、この本の中にも書かれているように、現代の憲法がマッカーサー率いるGHQのおしつけだからというような誤った情報によるものではありません。それは、少なくとも、マッカーサーの思うがままにおしつけられた憲法という概念自体が間違いだからです。
(実際問題として例えば憲法9条に関していえば、マッカーサー・ノートでは、自衛権はもちろんのこと、自己の安全を保障するものとしての軍備も一切放棄するとされていたので、、この点では日本の粘り越しで自衛権とそれに伴う軍備を認めさせている。また最近何かというと出てくる集団的自衛権国連憲章の51条、または日本の再独立を認めたサンフランシスコ条約にも集団的自衛権を認めると明記されれているので、日本が集団的自衛権をもっていることは間違いがないところで、ここで争うこと自体ナンセンスだと思います)
 僕が思うのは、憲法それ自体が最高法規だからこそ、そこに書かれている規定に従うならば、その根本原則も含めてのすべてを、そのときどきで国民の意思として国民が考える最高のものに変えていくことについて制限があるべきではないというもっともっとプリミティブな原則論の部分です。もちろん、そこにはそれを一切変えないという選択肢もあるし、部分的な改正という手もあるし、そういうありとあらゆる可能性を排除すべきではないという考えです。
 個人的にいえば、9条などについてはこうあるべきとかあるのですが、、、さすがに本紹介の本質からはずれるのでそれはまた別の機会に譲るとして、そういう憲法の大枠から考えていくたたき台としてはこの本はなかなかいい本だと思います。
 書き忘れそうでしたが、この本の巻末には、日本国憲法が全て書かれていますので、もう一冊憲法そのものを買わなくてもよいので、そういう意味でもよいと思います。
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憲法がヤバい (ディスカヴァー携書)

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