小説・漫画好きの感想ブログ

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「湖底の城」1巻 宮城谷昌光著 感想

宮城谷作品の文庫最新刊です。
彼の作品らしく、中国の春秋戦国時代に題材を取った歴史物です。
今回の主人公は、呉の伍子胥
今までの諸作品の中では割とメジャーな主人公なのではないでしょうか。
呉の中堅貴族の次男坊の伍子胥、二十歳の春から物語の幕はあがります。宮城谷作品らしく、主人公は某家を訪ねた時に「運命の女性」とおぼしき女性をちらりと見かけます。帰りしなに彼は同席していた父へその者を嫁に迎えたいと告げますが、例によってその願いは通りそうで通りません。。まま、このあたりは村上春樹作品でかなり年下の少女が出てくるのと同じで、宮城谷作品にはデフォルトの前フリなので、あまり気にせずにストーリーを追っかけていくべきでしょうね。
はじめは部下が二人しかいない彼が、少しずつ成長していき人間に深みをもっていく姿とその途中途中ではさまれる逸話の一つ一つは、これはたいつもの宮城谷作品と同じといえば同じなのですが、あいかわらずこちらの気持ちすっと清浄なものへと導きます。背筋がすっと伸びるような、人間かくあらなければならない、人間というものは常に精神を磨かなければならないなと思わせるような、そんな感覚です。
後半からクライマックスが昔ほど感情移入しずらくなってきた最近の宮城谷作品ですが、前半部分のワクワク度合いと、人間いかにあるべきかというような事を考えさせる力の強さは、あいかわらずピカイチでした。さて、これから伍子胥がどうなっていくのか。名前は知っていてもエピソードの多くは知らない伍子胥の物語を少しずつ楽しんでいきたいと思います。
そうそう、一巻ではちらりと孫子こと孫武も登場しています。

呉越春秋 湖底の城 一 (講談社文庫)

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