小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

推薦!! 「エルトゥールル号の遭難 トルコと日本を結ぶ心の物語」

推薦!! 「エルトゥールル号の遭難 トルコと日本を結ぶ心の物語」

今度のオリンピック候補地として、マドリードとともに、東京と開催地を争っているトルコ・イスタンブール
西洋と東洋の境にある、両者の文明が入り交じる世界史的にももっとも重要な都市の一つであるイスタンブールのあるトルコは、日本では親日国家としてとても有名な国ではあるが、そのキッカケになったとも言われている「エルトゥールル号事件」とは何か。詳しくご存知の方はどれくらいいるだろうか?
概要でいえば、明治時代にオスマントルコからやってきた軍艦エルトゥールル号が、日本へ表敬訪問したあとで和歌山沖で遭難・多数の死者が出たが、日本が彼等を救出しイスタンブールまで送り届けたというエピソードである。
僕は、これについて恥ずかしながら10年くらい前まで知らなかった。
しかも、知ってるとはいっても、イラン・イラク戦争のときに日本人がイラクから出れなくなったときにトルコが助けてくれた。その理由が、明治に起きたこのエルトゥールル号の遭難事件であったということくらいでおおまかな概要を知るくらいであった。
この児童書はその顛末を綴った本である。児童書とはいっても、物語の体裁がエルトゥールル号が物語を語るというファンタジーな体裁をとっているだけで、内容的にはしっかりと史実を追っていて、実に詳しいし、当時のオスマントルコ帝国と明治天皇統治下の大日本帝国とのやり取りも子供にもわかる範囲で儀礼と友好のバランスをうまくとりながら描写している。
そして、両国の礎になった事件を感動的に描きつつも、そこにあった軍部の見栄や無理やら
で多くの乗組員達が亡くなったこと、この物語にはドイツ軍も実は関わっていたこと等を当時の日本のマスコミのありようも含めてチクリと批判的に描くことも忘れていないという、実にバランスの取れた書き方をしている。
単純に、こんなに両国の友誼は厚かったのだ、という美談だけにもしないし、かといってそれが利害関係だけだったともしない。それぞれの国が、見栄をはってしまったり良くなかった処は認めた上で、それでも両国のそれぞれの人々がそれぞれのできる範囲で賢明に頑張ったし、それは当時の常識からするとエルトゥールル号の事件にしろ、イラク戦争の頃の日本人救出劇をやってのけたトルコ政府にしろ、友好国というのはこういうことなのだなという計算だけでない好意を見せたことを描いて、実にバランスがよいと思う。
歴史の教科書(これは教科書ではないけれど)は、これくらいバランスよくいいところも悪いところも書きつつも、当然きちんと史実に沿った上で脚色なく、それぞれが何を目指してそうしたかなども書くべきであるとも思いました。
これ、かなりいい本だったので(対象は小学校高学年から中学生くらいかな)、うちのストアの「お尋ねものはこれですか」にも入れることにします。ご興味ある方は是非お読みください。
http://astore.amazon.co.jp/tarui-22/detail/4778037596

エルトゥールル号の遭難 トルコと日本を結ぶ心の物語

エルトゥールル号の遭難 トルコと日本を結ぶ心の物語