小説・漫画好きの感想ブログ

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乙嫁語り」4巻   森薫

 前代の中東アジア(放牧を主にした部族たちの住む世界)を舞台に、結婚をモチーフにした作品「乙嫁語り」最新刊です。
 今回は、前巻で悲しい別れを経験した学者先生が新しい村に到着したところで出会う若い双子の少女と、彼女たちの結婚までの物語となります。15歳ともなれば結婚していてもおかしくない二人のかしましい少女達。彼女たちは、見目もよく、たくましい、そして財力のある若者と結婚したいと強く願っています。計算高いわけではなくて、それが普通だと思って、恋に恋するような夢見がちな気持ちのままで毎日結婚について考えています。すったもんだのあげく、彼女たちは幼なじみの兄弟のもとへ嫁ぐことになるのですが、その間の心の揺れや変化もまだまだ幼いままのもの。そんなのありえない、と思いつつも、一緒にデートしたり、話してみたら「よし、結婚しよう。親同士も納得しているし」とあっさりと決めてしまう単純さ。そして、それを幸せだと思える心持ち。そんなんでいいのかなと思わないでもないけれど、単純に喜んで単純に結婚して、そして幸せになるのに何の不都合も世の中にはないわけで。「恋に都合のいい恋も悪い恋もない」という名言がかつてありましたが、本人たちが本当に幸せであればそれはそれで構いやしないのです。
 そして、こういう単純な心性を失ってしまった日本は果たして本当に幸せなのだろうか、と柄にもなく変に哲学的に考え込んでしまったりもしました。今の日本だとあれこれ考えたり、先々計算したり、相手のことだとか考えすぎて結婚を見送ったり、結婚して子供を作って次代につなぐのが普通という感覚がなくなってしまったが為に、なかなか結婚できない人が増えているのを考えると、ちょっとそんなことを考えてしまったり。かくいう自分も(まぁこれは単純に女性と縁がなさ過ぎるというだけの話ですが)、結婚していないので余計にそんなことを思ったりでした。
 話を本編に戻すとして、森薫氏のこのシリーズでの魅力の一つに、登場人物たちの衣装や、風物の描き込みの端正さがあるのですが、それはこの巻においてもバッチリと生きていて、双子の少女たちの描き込み具合も、コミカルなディフォルメもすべてが緻密に綺麗です。この端整な絵柄が好きな僕にとっては眼福でした。
 

乙嫁語り 4巻 (ビームコミックス)

乙嫁語り 4巻 (ビームコミックス)