小説・漫画好きの感想ブログ

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「プロフェッショナル」 ロバート・B・パーカー著 感想

 探偵スペンサー・シリーズの文庫最新刊です。
 今回スペンサーにもたらされた依頼は、女性四人を不倫をネタにしている男に恐喝をやめさせること。彼女たち4人は、いずれも年のはなれた大金持ちの夫をもっている若くて美しい女達。上院議員を目指す主人をもつものもいれば、ヤクザの親分をそれとしらずに主人にしている妻もいた。共通項は年のはなれたお金持ちの主人がいるということ。
 彼女たちの言によれば、その男ゲイリー・アイゼンハワーは自分たちと偶然出会い、ラブアフェアを楽しんでいたが、別れてしばらくしてから恐喝をし始めたという。。。その額月に1万ドル。彼女たちにとっては、浮気も不倫も別に罪のないゲームのようなものだが、これはさすがにルールを越えるし、さすがにその額だと旦那に内緒で払い続けるわけにはいかない。かくして、色々調べて行くと自分と同じように恐喝されている女性達が見つかったので、彼女達は協力してことにあたることにしてスペンサーに白羽の矢を立てることにしたのだった。
 相手の本名も知らず、写真もほとんどないという難しい条件の中、スペンサーはゲイリーを見つけることに成功するが、彼は悪党というほどでもなく純粋にゲームを楽しんでいるかのよう。たとえ痛めつけたとしても恐喝はやめないという彼に、法律的には打つ手がない。法に訴えればすべてが明るみに出るという形では女性達には意味がないのだ。
 そんなおり、ヤクザの親分は事情を察するが妻を愛するあまり彼を殺すことができない。そして、そんな彼とゲイリーの間に入ったスペンサーは、誰も予想していなかった殺人事件に直面する。。
 
 このお話、プロットとしてはシンプルな部類になりますが、スペンサーの苦悩と人間らしさがよく出ている話だと思います。恐喝男ではあるんだけれど、どこか精神的に問題をかかえていて「誰かの女性」ばかりに惹かれて、どうせこれだけもてるんだったら次々と片っ端から女性を抱いて、その上お金までもらえるならばラッキーじゃんと開き直るゲイリーに少し憎めないものを覚えるスペンサー。雇い主だとはいえ、男遊びそのものをゲームのように捉え、中にはどうどうとスペンサーを誘惑する人妻まで出てくる依頼主達。彼の中では事件にどう決着をつけるか迷い、依頼が切れたあとでも事件にかかわっていたのが、、殺人事件から始まる展開に彼はずいぶんと苦悩する。真犯人に対する扱いにしろ、ある意味ハードボイルドな探偵にしては妙にウェットな今回のスペンサー。
 前作の「灰色の嵐」もそうでしたが、無分別で倫理観が破綻している依頼主達からの依頼が続いてくなかでスペンサーも少しずつ変質していっている気がします。彼の中で揺るがないものは、最愛の彼女スーザンへの過度の愛情とセックスのみになっているかも知れません。
この作品を読むとセックスに関して、やはり日本人と外国人は感覚が違うのだなぁと思うところしばしばでした。


プロフェッショナル〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕 (スペンサー・シリーズ)

プロフェッショナル〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕 (スペンサー・シリーズ)