「澪つくし料理帖 夏天の虹」 高田郁著 感想
「夏天の虹」 高田郁著 (澪つくし料理帖シリーズ最新刊)
料理小説で今一番人気作といっていい、高田郁さんの「澪つくし」料理帖シリーズの最新刊です。
前作で、憧れの人、小松原様との結婚を取りやめにする事に心に決めた澪。あれだけ好きでたまらなかった人との身分違いの恋がやっとかなうかと見えたのに、料理人として生きていくと決めて身を引く覚悟を決めた澪。なんらかの大どんでん返しで幸せな方向にいかないものかと思いつつ読んだ本作でしたが、、、それほど甘くはなく、むしろさらに過酷な試練が澪を襲う最新作でした。
今作、澪は自分の決意を小松原氏に語ります。
それを聞いて潔く身を引くと決めた小松原様は、「あとのことはすべて任せろ」と言ったきりすべて自分が悪者としてかぶり、縁談を壊し、澪のために別の人と結婚までしてしまいます。関係者にも一切の事情を隠して嘘で全てを乗り切って、彼女のために道を作ってしまいます。このあたりの潔さというか、本当に好きな人のためなら自分の評判や暮らしなどもすべて犠牲にできる小松原様の格好良さは並大抵ではありません(まぁ、結婚相手の方の身からしたらたまったものではないのかも知れませんが)。
ただ、そうした彼の思いやりを受けて、澪が心安らかに自分が選んだ道だからと進めるかといえばそんなことはなく、彼女には彼との別離の痛手だけではなく、これでもかこれでもかと不運、不幸が試練となって襲いかかります。親しい人を襲う事故、料理人として致命的な病、などなどこのまま死んでしまうのではないかと思うほどの事が続きます。
もちろん、彼女がそれでへこたれてしまうことはないのですが、、読んでいてあまりに辛いシーンが続くこの一冊、前々巻あたりで「なんだかあまあまで話がぬるくなったなぁ」と感想をもったりしましたが、今回は本当に辛かったです。
果たして澪は、この苦しさを乗り越えて、どこまで進めるのか。
吉原の太夫となった親友との再会や今後の人生はどうなっていくのか。読み終わった直後に続きが待ち遠しくなったそんな一冊でした。
夏天の虹―みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 (時代小説文庫))
- 作者: 高田 郁
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 2012/03/15
- メディア: 文庫
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