小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

「草原の風」中巻 宮城谷昌光著 感想 

 後漢の創始者、劉秀の一生を描いた物語の中巻です。
 前巻では、主人公の劉秀がその人柄と刻苦勉励の姿から人々を引きつけるようになっていく過程が描かれていました。王莽が開いた新王朝の失政から、農民が離散し、賊になり、各地で反乱が起きていき、その中で、劉秀も彼らの一族がいた地区で起きた反乱に加わって(というよりもむしろ首謀者同士を結果的に結びつけ)いくところが描かれていました。
 中巻では、その劉秀の挙兵から百万の大軍を破ったという昆陽の戦い、 そしてめでたく一大勢力の中で中心人物の一人となり、河北地方の平定に赴いたものの北方の州で窮地におちいる河北の難までが描かれています。
 さて、内容はおくとして、そういう飛躍のときを描いているわりには今ひとつ心が躍るところが少ないのがどうにも気がかりです。前巻がわりあいとゆっくりと主人公の成長や人とのつながりを描いていたのに対し、この巻はあまりに物事がたんたんと駆け足で進みすぎて感情移入ができません。今まで重要人物とされていた人物があっけなく死ぬかと思えば、非常に大きな戦いがあっという間に終わり、箇条書きのように事件が過ぎていきすぎているように思えます。
 

草原の風 - 中巻

草原の風 - 中巻