「ヒストリエ」7巻 岩明均著 感想
古代冒険ロマン漫画、「ヒストリエ」の最新刊です。
このお話の主人公はアルカディアのエウメネスという人物で、、、たぶん名前だけ聞いてもピンとこない人が多いと思いますが、かのアレキサンダー大王の部下です。書記官ということで、基本的には文官であったわけですが、戦闘においては一軍の将として活躍しているし、彼を見出したのはアレキサンダーの父であるフィリッポス2世であるものの、エメネウス自身は王の側近にはなったもののそもそもがマケドニア人でもないという異端児でどうしてそういう地位に上り詰めたのがわからない謎の人物で、、そういう人物を上手く使って創造的な物語を展開しているのがこの「ヒストリエ」です。
謎が多い人物ということで、作者の岩明さん(「寄生獣」の方です)は、このエウメネスを権力に物怖じしない不思議なキャラクターとして設定し、彼を狂言回しにすることで、アテネやアルカディアなどのギリシア世界、またマケドニアの世界を俯瞰的な位置から眺めて舞台のように見せています。どの登場人物にもつかず離れず、細かいことを描いてみるかと思えば、いきなり大局が語られたり、仄暗い陰謀や醜聞が舞台劇のように描かれます。今回でいえば、アレクサンドロスの実の父親らしき人物が殺されるシーンは、うまい演出で思わず魅入ってしまいました。
ただ一つ気になるのは、最近のこの手の漫画同様に、この漫画はいったいどこまで歴史を追いかけるのだろうかということ。同様作品の「アグリッパ」でも、アグリッパはいまだまだ少年で、アウグストゥスの一生と絡めて描くなら数十巻あっても足りないだろうし、中断中の「チェザーレ」も十数巻あっても足りないお話。三国志の「蒼天航路」みたいにひたすら長く連載できればまた違うかも知れませんが、そのあたりだけがちょいと心配です。
でも、数少ないこの時代、ギリシャ・ローマ時代の漫画なので是非とも長続きして欲しいなと思います。ただ年に一巻しか進まないんだよなー、この人。
- 作者: 岩明均
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/11/22
- メディア: コミック
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