小説・漫画好きの感想ブログ

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「草原の風」上  宮城谷昌光著 感想 

「草原の風」上巻  宮城谷昌光著  感想

 中国・後巻の創始者、劉秀の一生を描いた長編作品です。
 新聞紙上で連載されている(ひょっとしたら、現時点では終了しているかも知れません)ので、ところどころを読まれた方もいるかと思います。時代背景的には、王莽という簒奪者が漢王朝を乗っ取り自らの王朝を拓いて数年後から物語は始まります。
 王莽が台頭するに従って、自然と領地を削られ、左遷され、時には誅殺されていく劉氏一門の中にあって、主人公の劉秀はその傍流も傍流、自分の家では食事をするすることもできず、親戚に養子に出された三男坊でした。本来なら歴史の表舞台に出てくる人物ではありません。しかし、彼の誠実な人柄や陰ひなたない努力の姿勢に感じるところのあった養育先の人物や、その周辺人物に助けられて都へと留学させてもらえることになった劉秀はいくさきざきで様々な知己や師、保護者を見つけていきます。そのことと、王莽によって彼らの所属する南部の劉家が王莽によって滅ぼされる恐れがでてきたことによって、彼はどちらかといえば巻き込まれる形で表舞台に徐々に出てゆきます。
 それは、彼にとっては、自らがそういう位置にあることや、周囲が力になってくれることに戸惑いながらにすることなのですが、だからこそか彼のまわりには不思議に人が集まってゆきます。このあたりは、始祖の劉邦劉備玄徳のような野心家とはタイプが違いますが、自分より有能だったり有力なものが集まってきて事を成すという点においては劉家の血の力というか不思議な運命を感じさせます。話が逸れました。上巻では、まだまだ彼は一個人で自らの手の届く範囲で、自分や、自分の家についてきた奴僕のこと、仮寓させてくれた本家のために動いていますが、次の中巻からは、彼がどんどん表舞台にたち始めることと思います。
 次巻がとても楽しみです。

草原の風  上巻

草原の風  上巻