小説・漫画好きの感想ブログ

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「フランケンシュタイン」 D・クーンツ著 感想 

 フランケンシュタイン三部作の最終刊です。
 シリーズは一応五巻まで続くようですが、古代から現在まで続く、フランケンシュタイン博士とその最初の人造人間との対決を描いた作品としてはこの三巻で一旦終了、次からは仕切り直しとなります。
 このシリーズ、そもそものスタートからテレビドラマ的な作り方をしているのですが、この第三巻はまさにそうで、人造人間の存在を知った刑事、街を密かに支配するフランケンシュタイン博士、その手下の人造人間達の崩壊、新しく生まれた生命体、壊れていく人造人間たちのエピソードなどが、めまぐるしく場面を変えて描かれながら最終的なカタストロフィへと向かっていきます。
 ゴシックホラー、もしくはモダンホラーを読みたいというむきには、この小説の視点の移り変わりの激しさはちょっときついものがあると思いますが、連続ドラマのノベライズのようなものとして読むとそのスピード感はむしろ別物として割り切ることで楽しむ方がいいと思います。
 錬金術師から遺伝子工学博士へと転身して人造人間を大量生産して世界の崩壊と旧人類の駆逐を望むマッドサイエントとして描かれるフランケンシュタイン。(世間的にはこちらのほうがフランケンシュタインという名前で認知されている)人造人間一号の苦悩と特殊能力。スピード狂の女性刑事とその相棒の冗談ばかり言っている刑事のかけあい漫才のようなノリ。人間そっくりのレプリカントとして本物と入れ替わって生活している人造人間たちのグロテスクなユーモア。新たに生まれた不思議な生命体と、人造人間の擬似的な親子関係のほほえましさ。 
 そういうのをモザイクを眺めるように、それこそ神の視点で楽しむのがこの本の一番の楽しみ方ではないでしょうか。いっそ軽快なノリでテレビドラマ化したのを流して欲しいです。
 四巻以降については最後にどんでん返しがありますが、さすがにそれはネタバレ過ぎるので割愛します。

 

フランケンシュタイン 対決 (ハヤカワ文庫NV)

フランケンシュタイン 対決 (ハヤカワ文庫NV)