小説・漫画好きの感想ブログ

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「探偵はバーにいる」 東直己著 感想 

 大泉洋主演・競演に小雪と松田龍平を配した映画「探偵はBARにいる」がとても面白かったので、原作シリーズにあたる<ススキノ>探偵のシリーズ第一作「探偵はバーにいる」を読んでみました。
 先に映画を見てしまったので、イメージが違いすぎるとどうかなと思って読み始めたのですが、原作のほうがより破滅的で自堕落ではあるものの、読めば読むほど大泉洋のキャスティングはあっていたんじゃないのかというくらい、頭の中で大泉洋に変換してストーリーを映像で追う事ができました。
 ストーリーはいたってオーソドックスな探偵もので、常連のバー<ケラー オオハタ>にいる彼のもとに、大学の後輩が彼女探しを依頼するところから始まる殺人事件の謎解きものでした。ヤクザに、デートクラブ、娼婦、ヒモ、クズ、酔っぱらいたち、と昔懐かしのハードボイルドものに出てくる道具立ては全てそろっており、安心して楽しむ事ができます。なおかつ、主人公がかなりのアル中具合で往年のミステリーファンならロバート・ブロックのマッド・スカダーを彷彿とさせるシーンもあれば、けっこう殴られて気絶させられたりしながら事件解決にひたすら邁進するレイモンド・チャンドラーフィリップ・マーロウの愚直さと感傷癖を思い出すかも知れません。
 まぁ、そういうタイプの小説ということです。
 でも、単なるそういう流れの亜流の出来ということはなく、ススキノというアジア北部で最大の歓楽街であるところの土地をうまく利用して雰囲気とオリジナリティを出しているし、作品もハードボイルドでありつつも後半は結構ツイストがいくつもありプロットもすごく練られています。また時代風俗をかなり正確に再現しているようで、読むとあの時代あたりだなとぴたっと自分の記憶にある歴史とはまるので、読んでいて妙なノスタルジーを感じたりもしましたし、個人的にはかなりの高評価作品です。
 ですので、ちょっとシリーズで追いかけてみようかと思います。

 ちなみに、主人公が読む飲むカクテル「ラスティネイル」はスコッチウィスキーとドランブイ(ドンブイと表記する人もいるようです)というリキュールを混ぜたカクテルで、B&Bやフレンチコネクションのような甘さと強さをあわせもったカクテルが好きな人なら美味しいカクテルだと思います。先日、いきつけのバーで作ってもらったんですが、美味しかったです。

探偵はバーにいる (ハヤカワ文庫JA)

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