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「エージェント6」上 トム・ロブ・スミス著 感想 

 「チャイルド44」「グラーグ57」に続く、トム・ロブ・スミスのロシア秘密警察捜査官のレオ・デミドフシリーズ三部作の完結編です。
 元秘密警察の刑事であり捜査官だったレオ。彼は、体制の体現者のようなエリート捜査官だったが、過去の色々な事件と経験からその地位を離れ、今では、立派な妻ライーザと養女の二人と暮らす平凡で良き父親となっています。かつての激しい戦いや権力との戦いも過去のものとなり、貧しいながらも幸せな家庭生活を送るレオですが、そんな彼の前に再び過酷な運命が降りかかるというのがこの「エージェント6」です。
 前半、レオがライーザと出会う二十年以上も前のエピソードから始まったときには、「?」と不思議に思いながらも何気なく読み進めていましたが、作者のえげつない仕掛けはここから始まっていました。一目惚れのようにライーザに惚れるレオ。アメリカの共産主義者の歌手の護衛中に結ばれる、歌手とライーザとレオの関係。ネタバレになるので絶対に書けませんが、本当にひどい所から仕掛けは始まっています。
 時代が進んで、教師として出世していく妻のライーザは、ついには敵国アメリカに国の代表者の一人として渡米するまでまでになります。東西冷戦・キューバ危機を脱したばかりの米ソ関係の緊張緩和のため、国連でアメリカとソ連の子供たちによる合唱コンサートの開催をしようという計画が持ち上がり、彼女はその合唱団の引率代表者として参加することになります。と同時に、娘のゾーヤとエレナも合唱メンバーとしてそれに参加することになります。国にに睨まれているレオをロシアに残して、彼女はアメリカへと旅立ちますが、そこには色々な計画が彼女の知らないところで持ち上がっていました。
 そして、その計画は、悲劇を生みます。
 あまりにショッキングな上巻ですので、ネタバレ回避のために詳しく書けませんが、三部作の最後を飾るにふさわしい衝撃的な展開の上巻でした。分厚くても一気読みしてしまうリーダビリティーの良さも見逃せません。間違いなくおすすめです。

エージェント6(シックス)〈上〉 (新潮文庫)

エージェント6(シックス)〈上〉 (新潮文庫)