小説・漫画好きの感想ブログ

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「きのうの世界」(下) 恩田陸著 感想

 「きのうの世界」下巻です。
 上巻は恩田陸らしく、不可思議な世界、次々と増える謎、ちらほらと見え隠れする非日常、特殊な能力、などが目白押しでページを繰るのももどかしいほどに面白かったのですが、、、、終盤はこれまた悪い時の恩田陸らしく失速。物語が閉じてない印象を受けます。空中分解して収拾がつかなくなったような、もしくは無理に形だけ平仄を合わせような、そんな印象を受けます。
 物語冒頭で殺人事件の被害者として出て来た市川吾郎。彼が誰にどのように何の為に殺されたのか、という最初の謎についても最後の最後ですべて明らかになるんですが、、、その回答に関しては、本を壁に投げつけてしまいたいと思う人もいるんではないかなぁと思います。こんなのありですか? これはひどくないですか? と。作品全体のトーンや、不可思議な世界と繋がっている空気、なんとなく現実が崩れていく感覚、いずれもが凄くいい雰囲気だっただけに最後の最後の着地で大失敗しちゃったと感じます。
 あくまでも個人的な感想ですが、僕にとってはこのラストは失敗のような気が致します。
 うーん、本当に残念。前半まではよいけれど後半失速の作品でも、それでも雰囲気が素晴らしくて何度か読み返した「ネクロポリス」と比べると、これは数段落ちる感じがします。前半はいいんですけれど、後半がね〜。残念。

きのうの世界(下) (講談社文庫)

きのうの世界(下) (講談社文庫)