「バーテンダー」 20巻 長友 健篩、 城 アラキ著 感想
円熟味を加えてきた「バーテンダー」20巻、最新刊です。
主人公の佐々倉溜と、見習いの翼が一緒に開いた、バー・イーデンホールR&Tも徐々に軌道に乗り始め新しいお客様が次々と登場します。
今回、驚きとともに感動したのは次の二点。
一点目は、この作品が過去のキャラクターを殆どといっていいほど多用しないこと。初期の頃にずっと出ていたホテルオーナーのお嬢さんも、Mr.パーフェクトの葛原も、師匠も、バーの同僚だった人たちも、時折り顔を見せ物語に華を添えはするものの、基本的には出ずっぱりのお約束の人間関係・人間ドラマ、身内の盛り上がりを避けていること。これは物語作りという観点からいえば、書き手の方のハードルが上がる一方だし、人気キャラをあえて出さないというのはストイックだと感心します。また、そのことによって、新しい読者がどこから読んでも、すっとその世界に入っていけるようになっています。このあたりは、作品の舞台が、居酒屋でもスナックでもなくて、一人ですっとはいっていくバーという店とイメージがかぶさって物語的に綺麗だなとも思います。
次に二点目。これは、この20巻の構成が本当に見事でした。ほぼ一話に一人ずつのペースでこの店に初めてのお客様が現れては、一つの小さな物語が終わります。それが徐々に人数が増え、最後のお話で全員が少しずつ一つの物語を共有し、静かな感動と余韻、それぞれに別れた足でまた新たな一歩を進んでいこうという気持ちを共有する。いい意味でお酒に酔えたときと同じような感覚をまるで一本の映画を見るように見せてくれるこの構成力と物語の紡ぎ方、これには本当に感動しました。
人気連載漫画ということにあぐらをかくことなく、ますます進化するこの「バーテンダー」という漫画は是非是非皆さんに読んで欲しいです。
- 作者: 長友健篩,城アラキ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2011/09/02
- メディア: コミック
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追記;そしてこの漫画を読めば、今度バーに行ったらあれを頼もう、これを頼んでみよう、と飲んでみたいお酒が増えていきます。今回もなかなかに魅力的なお酒が登場でした。
追記:嵐の相葉雅紀と貫地谷しほり、荒川良々でやっていた金曜ドラマのバーテンダーからこの漫画に進んで定着していた人はどれくらいいるんだろう。多いといいなぁ。