小説・漫画好きの感想ブログ

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「きのうの世界」(上) 恩田陸著 感想 

 不思議な二つの塔と(こわれたもう一つの塔と)水路に囲まれた小さな町。そこの水無橋の上で一人の男が殺されていた。その男は一年前に不意に失踪した男だった。わずか十数分の間に誰がその男を殺したのか。そして近くのバス停に落ちていた犯行現場を示すメモは?
ということで、ひさびさの恩田陸は殺人ミステリです。
 しかし、さすがに恩田陸。一筋縄ではいきません。普通の小説なら、少しずつ少しずつ小出しに出されていく情報と状況描写で、本来ならどんどん物語の輪郭が絞り込まれていくはずなんですが、この小説では情報はひたすら物語の輪郭を大きく曖昧にしていきます。下巻でどんどん物語は収束していくとは思いますが、非常にミステリアスな、恩田陸らしい小説です。
 ネタバレにならないように、上巻の紹介としてはこのあたりで。

 

きのうの世界(上) (講談社文庫)

きのうの世界(上) (講談社文庫)