小説・漫画好きの感想ブログ

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「激マン!」4巻 永井豪著 感想 

 永井豪が自らの過去を回想しながら、その漫画の連載当時のエピソードや背景などを自叙伝的に描く漫画です。今回はデビルマン連載中期の話。デビルマンは、連載途中にして最終回までの回数が決められ、それは永井豪が描きたいと思っていた話を描ききるにはあまりに回数が短かった。1年をかけてじっくりと描きたいのにそれだけの時間的余裕はなく、物語の流れを優先させると主人公の活躍シーンすら満足にかけない。さりとて、活躍シーンを増やすと、物語は途中で終わることになってしまう。物書きとしては最大のジレンマが永井を悩ませる。
 結局、彼は物語を完結させることを最優先して、途中のシーンをひたすらこそげ落とし、デビルマンに集中するために他に抱えていた人気連載をも自ら打ち切り、この作品に集中します(唯一同時並行で残したのは「マジンガーZ」のみ)。
 このあたりの思い切りのよさは今の漫画家さんだとちょっと難しいかと思います。
 さて、作品内容についてですが、読んでいて、個人的に驚いたのはこの「デビルマン」という作品の永井豪の中での位置づけとその隠されたテーマです。永井豪は、この甦ったデーモン一族とデビルマンとの戦いを、未来に起こりうる世界戦争とそれに参加する未来の日本軍として捉えて、その悲惨を表現し戦争回避への警鐘としてこの作品を描いていたといいます。デビルマンは、意外なことに未来の日本軍のアナロジーだったらしいのです。僕はそういう背景を全く知らず、デビルマンはアニメ版から入ったし、漫画もハルマゲドンを題材にした永井豪のライフワーク的な作品として捉えていたので、そのくだりはちょっと意外でした。また、不動明の友人のあの飛鳥了のキャラクターについても、最初からすべてが設定されていたわけでないということにもちょっと驚きました(てっきり飛鳥了は最初から○○の化身として設定されたのかと思っていました)。 
 
 デビルマンといえば、のちに「ベルセルク」に結実するダークヒーローの系譜のシンボリックなものとして捉えていたのですが、まだまだその作品に秘められたものは多いのかも知れません。

激マン! 4 (ニチブンコミックス)

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 追記:「デビルマンレディー」などのパラレル作品や、「バイオレンスジャック」などもこれにつながります。