小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

「拝啓 大阪府知事橋下徹様 あなたは日本を変えてくれますか?」 倉田薫著 

 前大阪府市長会会長にして池田市市長の倉田薫が書き下ろした、大阪府知事橋下徹と大阪市長平松邦夫へのメッセージ本です。この二人はいまや犬猿の仲なのは周知の通り。維新の会という新政党を率いて大阪都構想をぶちあげて大阪市解体から一気に大阪府再生を狙う橋下知事に対して、大阪都構想というのはよくわからないと大阪市解体を一蹴する平松邦夫市長。この二人の激突は、数年前の橋下知事と平松市長誕生時の往時の蜜月関係を思い出せば隔世の感がありますが、本書を読めば読むほどに激突は必至だったというのがよくわかりますし、大阪都構想に対してスーパー大阪市構想が正面からぶつかりあうのは、この二人以前からの事としてすんなり受け入れられます。
 しかし、ことが全国区にまで広がったのは、やはり橋下徹という無類の力強さと攻撃力をもったキーパーソンが存在しているからなのも間違いが無く、本書はその橋下府政誕生からずっとそれを大阪府下の市長のとりまとめをしてきた立場から見続けて来た倉田氏独自の観点で綴られています。
 彼なら本当に大阪を変えてくれるのではないかという期待と、そのやり方ではかえって物事が上手く行かないのではないかと心配する老婆心との葛藤や迷いが見て取れて大阪の問題を府知事と市長に絞り込んで概観するのにはちょうどよい一冊です。惜しむらくは全国トップクラスの生活保護者数や失業者数、在日問題、同和問題、など政治的な重要案件については水道問題などの二重行政問題に比べると扱いが小さく、かつまた倉田氏のスタンスが見えない書き方になっているのが、現役の政治家らしいといえばらしいのですが、老獪さを感じさせてマイナスに思えます。そのことは、この二人の戦いのどちらにも与しないでどちらにとってもいい顔をしているようにも見えるところが見えるのと同様であまりいい感じをもてませんでした。
 ただ、先ほども書きましたように、大阪府と市の抱える構造的な問題に絞っての概観と、橋下徹というキャラクターによってうまれた大阪の新しい流れについて読むにはちょうど手頃な一冊です。
 ときちょうど、もうじき大阪市長選で下手をすれば橋下徹府知事が知事を辞職して、自身が市長選に鞍替え出馬するかも知れないという時期ですし、投票の前に読んで自分の政治的な投票に生かすのにもよいかも知れません。元読売テレビアナウンサー、今だと「たかじんのそこまで言って委員会」の司会者といったほうが通りがいいかも知れない辛坊治郎氏が維新の会から大阪市長、もしくは大阪府知事に立候補するかどうかは明らかにされませんでしたが、そのあたりも含めて読みどころは多かったです。

拝啓 大阪府知事橋下徹様―あなたは日本を変えてくれますか? (YUBISASHI羅針盤プレミアムシリーズ)

拝啓 大阪府知事橋下徹様―あなたは日本を変えてくれますか? (YUBISASHI羅針盤プレミアムシリーズ)

 一応、教育委員会との全面対決の経緯や、日教組や教育委員会との対決後に、教員の人事権を聖域の文部省から行政サイドにもってきたのは橋下氏の重要功績となっています。このことと、先般の「国旗掲揚義務化 国歌君が代の斉唱義務化 罰則導入」と並んで日教組からする橋下徹府知事は憎んでも憎みきれない相手になっているのでしょうねぇ。