小説・漫画好きの感想ブログ

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「グイン・サーガ・ワールド」1巻 宵野ゆめ・牧野修・久美沙織著 感想 

 こんにちは。
 ずいぶんと長らく悩み悩みしていましたが、ようやくというか、やっとというか、感想・レビューです。
 栗本薫先生の代表作品で、途中絶筆になってしまった大河伝奇ロマン「グイン・サーガ」、その意志を受け継いで色々な作家さんがグイン・サーガの物語世界を舞台に新しい作品を書き上げて行くというスタイルのこの本。巷間では、グイン・サーガファンの中からも、「栗本さん以外のグインは絶対に認めない」であるとか「ファンに対する冒涜だ」という声も一部から聞こえたりするほど賛否両論が発売前からありました。僕個人としては、せっかくのあれだけの作品だし、豊穣な物語としての土壌がそこにあり、その世界を愛する人々がこれだけ多い作品なのだから、直接本編の続きを誰かが書くであるとか、主要人物の過去が描かれたりするというのでなければ、それはそれで素敵な試みだと思うし、そこから未来の大作家が誕生したり、或いはこの人になら、「グイン・サーガ」の続きを書いてもいいと衆目が一致するような方が生まれたりするのであれば、それが一番いいのではという密かな望みももっていましたので、とてもよい試みだと今でも思っています。
 そして、幸運なことにというか、ひょんなご縁から今回の作品をお書きになった方とご縁が出来たことで正式出版前のサイン本まで戴きました(家宝に致します)ので、本来なら、いの一番に感想をアップさせたいところだったのですが、悩みに悩んだ末ですが、どうしてもこの中の一本がつまらない、というか、これはどうなんだろうと思ってしまったこともあり(十本くらいある中で一本とかだったら、中には「ちょっとあわない作品がありまして」と軽く書けるんですが、三作中の一本となるとなんか気まずいものが出てしまうのでは、、せっかく始まったばかりの試みなのに水を差してしまうのではとどうしても思ってしまうのです)、ご紹介が遅れました。
 普段、ここで色々な本を紹介していますが、その中にはつまらないとバッサリ書いたり、ひどい作品に至っては個人的にあわないだけなのかも知れないけれど「商業作品とするレベル、小説になっていない」ともう営業妨害といってもいいレベルの切り捨て方をしている作品もあります。なので、そんなことを気にする必要もないのかも知れません。けれど、お知り合いの方、今後応援したいなと思っている作家さんが書かれている作品が掲載されている本だけに、かなり迷っておりました。
 けれと、いつまでもずるずると紹介記事も書かない、置きっぱなしにしておくことは、この「グイン・サーガ・ワールド」という試み自体に対して、自分がノーといっているような変な誤解を受けたり、或いはまた、全体として面白くないと思っている風に伝わるのはより本意ではないと思いますので感想を書かせていただきます。
 で、上記のような理由により、特にどの作品がどうというのは割愛させていただきますが、グイン・サーガ・ワールド、1巻目はまずは皆さんそれぞれちょっと遠慮したかなぁという印象は総じて受けました。一部かなり大胆に突っ込んだ話を書いた方もおられますが、全体としては少し外堀から埋め始められたなと思いました。前述のようにいきなりグインのSF的側面から彼のバラレル世界での冒険活劇を書き始めるとか、グラチ薄の修業時代とかそーいうところを書き始めるとか、或いはまたヤヌスとドールの戦いの神話を描いたりとかそういうダイレクトに切り込んでくる話ではなく、その世界を借りたというところから始まっています。なので、まだまだ作品自体がどうこうという所ではないのですが、それでも三者三様に方向性が全く違うところが面白かったですし、新しい魅惑的な登場人物が出てくる話もあり、そこは期待できると思います。というか先がどうなるか楽しみです。グインの世界は、やっぱり人間と妖魔、神話的なものが共存する混沌とした世界であるところが魅力の一つですし、登場人物のいろいろな意味でのインパクトの強さも魅力ですからそういう方向性が出てくるのは読んでいて面白いです。
 アフリカを想像させるような南の大陸から、モンゴルのような大草原の風を感じられる世界、灼熱の砂漠、猥雑な活力と海の恩恵にいきる諸島の貿易都市の世界まで感じられるのがグインの魅力ですから、その世界の各地で起こる色々な作品をこの「グイン・サーガ・ワールド」で僕は読みたいと思います。

 

グイン・サーガ・ワールド1 (ハヤカワ文庫JA)

グイン・サーガ・ワールド1 (ハヤカワ文庫JA)