小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

「昔日」 ロバート・B・パーカー著 感想 

 本年125冊目の紹介本です。
 故人となってしまった、ロバート・B・パーカー(ときどき混同される方がいますが、ワイン評論家のパーカーさんとは別人です)さんの、私立探偵スペンサーシリーズの文庫最新刊です。
 
 とある中年男性からの妻の浮気を疑う調査依頼がもたらされます。よくある浮気調査の依頼かとスペンサーは軽く引き受けますが、その浮気調査であっさりと妻の浮気が確定し、依頼主の男性にその事実が告げられると数日後には、妻と白昼堂々と撃ち殺され、主人も殺されてしまいます。
 どうやら、妻が浮気していた相手がなんらかの反政府組織と結びついていたようで、殺された主人がFBIの捜査官の一人だったこともあり、事件は大事になっていきます。しかし、その反政府組織というものの実態は大して危険でも過激な組織でもなく、いささか首をひねるところがあり、スペンサーは直接浮気相手との対決を望みます。
 というのがミステリとしてのあらすじなんですが、実は今回のスペンサーのお話、事件解決のプロットやミステリ自体はわりとどうでもいい感じで、浮気された男性と、主人を裏切った妻というところに、スペンサーとその恋人のスーザンがかつての自分たちの問題を見いだして過剰に肩入れし、事件を解決することで、自分たちの問題を解決しようとしていることがあからさますぎるくらいあからさまで、ある意味、他人の事件をつかっての心理カウンセリング治療のようで、正直ちょっと疑問符がついたお話でした。
 そもそもが、スーザンとスペンサーの過去(このあたりは「キャッツキルの鷲」だったかな、で語られた事件です)の浮気問題、三角関係の話というのも、もう二十年近く前の話で、そんな初期の出会いの頃の浮気事件がいまだに、スペンサーとスーザンの間になんらかの痕跡として残っているのが不可思議でした。なんせ、この二人ときたら出会いから既に二十年以上たっているというのにも関わらず、毎度毎度ラブラブでセックス依存症ではないかというくらいに、色々いたしているカップルですから、そういう問題はとうに克服したと思っていたのですが、そういう問題ではないのでしょうかね。
 DVというよりは、強烈な精神をもった相手に影響を受けやすいような気質をスーザンがもっているというのはしばしば語られることですが、それだからといって、その浮気がこんなに長いこと意識の底にとどめられたりするのはなんだか不可思議だし、もしスペンサーのほうが本当にそんなことを気にしているのなら、なんて心が狭いというか狭量なんだろうかと違う意味でタフガイ、ハードボイルドの主人公としてのスペンサーの器に疑問を覚えてしまいます。
 普通に考えて、結婚したわけでもなんでもない状態の、二十数年前の浮気、しかもその浮気相手は反政府系の組織だったということで、FBIの支援を受けてそのアジト的なところまで壊滅させる血と破壊の復讐劇的痴話喧嘩をやってのけた事件をいまだに気にしているとなると、ちょっとねと思いませんか?
大人の男なら、それだけその時の自分には魅力がたりなかったのだな、と反省した上で、その後の二十数年感の積み重ねがあって全然どうでもいい事件だよと流せなかったのかなぁと思わないでもありません。勿論、浮気された上で、自分のことを馬鹿にする妻の台詞や浮気シーンの録音を聞かされて、そのうえで殺されてしまったFBI職員というのはあまりに可哀想ではありますが、、。
 

 追記:浮気という話でいえば、麻木久仁子さんがまた注目されていますが、、これで彼女が復活すると、山路徹氏も復活しているだけに、、大桃美代子さんが可哀想すぎます。