「冷血の彼方」 マイケル・ジェネリン著 感想
本年85冊目の紹介本です。
チェコから分離したスロヴァキアの女性警察官、ヤナ・マティノヴァを主人公にしたミステリシリーズの第一弾です。社会主義国家から転向したとはいえ、スロヴァキアではまだまだ党による支配と反政府主義者には秘密警察を通じてありとあらゆる手段で弾圧と粛正が与えられる社会です。そういう世界であるが故に、主人公のヤナも、元旦那でバレエダンサーだったダノや、娘のカトカとの間にとても厳しい確執と別れを経ており、国をまたぐ人身売買ネットワークの捜査というミステリとしての本編と同じ比重で、その悲しい家族の軌跡が描かれています。
正直、暗くて重いし、ひたすら人が殺され続けます。
それも結構残酷な方法で、あっけなく殺されていきますので、このあたりは好みが別れるかなぁと思います。
あらすじとしては、これらの事件には、犯罪組織の王であるコパという人物の影が最初からちらつきます。コパはいろいろな国にまたがる犯罪組織のボスで不可侵の存在とされていますが、彼が死んだのではないか、という噂が犯罪組織内部の内紛も引き起こして事態はだんだんコントロールを失っていきます。そんな中、国をまたいでの捜査権をもたないヤナは、直接捜査の指揮を取れるわけもなく、いろいろな制約のある中でほぼ個人的に事件を追いかけ続けます。
最初はウクライナ、次いでEUの首都的なストラスブール、そして南のニースへと。
捜査範囲は広がり、死体も増えていき、いつしか犯人を追いかけているのか犯人に追いかけられているのかわからない状態に陥りつつも少しずつ事件の核心へと迫ります。
というわけで、ひさびさの海外ミステリだったんですが、とにかく人が次々に死ぬのと登場人物が多すぎるので読むのに正直骨が折れました。おかげで色々と小説本がたまっていってしまっています。少し前にグインのオフ会で進められた本もおかげで未着手です。ぼちぼちとそのあたりも読んでいきます。
- 作者: マイケル・ジェネリン,林啓恵
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2011/02/24
- メディア: 文庫
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