小説・漫画好きの感想ブログ

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「紀伊の変 居眠り磐音江戸双紙36」 佐伯泰英著 

 本年83冊目の紹介本です。

 居眠り磐音江戸双紙シリーズ最新刊です。
 田沼意次の刺客を逃れての逃避行、流浪の旅の途中でたどり着いた姥捨の郷で遂におこんが出産、男児を得た佐々木磐音は、今回もまた人助けの事件に乗り出します。ことの発端は、雑賀衆を束ねる草蔵が京で仕入れてきた丹の専売公社化の噂。京都所司代の言い分のままでは、隠れ里である姥捨ての郷の財源である丹採掘の鉱山の存在が公けになるだけでなく、幕藩の手が郷に及んでしまいます。 
 郷を支配する三婆と長老たちは高野山にすがることにし、その手助けを磐音にも頼みます。ただし、今回の人助けは、丹を巡る田沼意次の暗躍に和歌山藩や高野山、雑賀衆などの思惑が入り乱れる政治的な事柄が多々絡んできます。磐音は、多くの者には「一介の剣客ですから」、と政治向きのことには口を出さずに用心棒に徹する風情で相対しますが、激動の運命は彼にどうしても傍観者たりえることを許さず、今回も未来の和歌山藩主の岩千代様を、将軍候補として江戸に送るか送らぬかの揉め事にまでも巻き込まれていきます。
 その頃一方、江戸では品川柳二郎とお有さんの婚儀が進んでいました。まぁ、こちらの方はシリーズキャラクターの顔見世ということでたいして事件はありませんが、波乱の中に、遠く離れた江戸では旧友の結婚式がある。そのことで、ちょっとだけのんびりとした雰囲気が作品に流れていた今巻でした。

紀伊の変 ─ 居眠り磐音江戸双紙 36 (双葉文庫)

紀伊の変 ─ 居眠り磐音江戸双紙 36 (双葉文庫)